介護におけるICT活用とは?導入に失敗しないための3つのポイント

介護業界は、人手不足や業務負担の増大という深刻な問題に直面しています。これらの課題に対処するための有力な手段として、ICT(情報通信技術)の導入が注目されています。
さらに、2024年(令和6年)に介護報酬改定を控え、より良いサービスの提供と業務効率化を目指す介護業界では、ICT活用の重要性がますます高まっています。

本記事では、そんなICTの活用法やメリット・デメリット、そして導入のポイントについて詳しく解説します。

ICTを介護現場に効果的に取り入れ、質の高いサービスと業務の効率化を実現しましょう。

介護におけるICT活用とは

介護 ICT活用1

まずは、介護業界でのICT活用の重要性と現状を確認しながら、ICTの活用事例を見ていきましょう。

ICT活用の重要性

公益財団法人介護労働安定センターの調査によると、介護事業所全体における「人材不足感」は63.0%に上り、特に「訪問介護員」の不足感は80.6%、「介護スタッフ」の不足感は64.4%という結果が出ています。

引用:公益財団法人 介護労働安定センター「令和3年度『介護労働実態調査』結果の概要について」

さらに、介護スタッフの必要数は増え続け、2025年度には約243万人、2040年度には約280万人になる見込みとなっており、介護業界における人手不足は深刻な問題です。

この人手不足を解消するためには、ICT活用による業務の効率化と生産性の向上が欠かせません。
先進的な介護施設では、ICTを使って業務を効率化し、より少ない人員でも高品質なケアを提供しようとしています。

厚生労働省も、現行の人員配置基準である「3対1」(入居者3人に対し、常勤職員が1名)よりも少ない人員での運営を検討しており、2024年の介護報酬改定に向けて、人員配置基準の緩和策を提案しています。

これらの状況から、ICTを活用した介護業務の効率化は急務となっていることがわかります。

参考:厚生労働省「第8期介護保険事業計画に基づく介護スタッフの必要数について」

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ICT活用の現状

介護分野でのICT機器の活用状況を見てみましょう。
公益財団法人介護労働安定センターの調査によると、介護施設の52.8%が「パソコンで利用者情報(ケアプラン、介護記録等)を共有している」と回答し、前年の50.4%から僅かに増加しています。

また、42.8%の施設が「記録から介護保険請求システムまで一括している」ことがわかりました。タブレット端末等で利用者情報を共有している施設も28.6%(前年22.0%)に増加しています。

しかし、ICT機器の活用を「いずれも行っていない」施設も22.0%(前年25.8%)あり、ICTの活用が進んでいない施設も一定の割合を占めていることがわかります。

引用:公益財団法人 介護労働安定センター「令和3年度『介護労働実態調査』結果の概要について」

ICT活用の取り組みは施設やサービスによってまちまちですが、全体的にICTの導入・活用が徐々に進んでおり、業務効率化やサービスの向上に役立っていることがわかります。

それでも、まだICTを活用していない施設もあり、これらの施設に対する導入支援や教育がが必要な状況です。

ICT活用の事例

介護分野でのICT導入は、労働力不足や効率化の対策として有効です。
現在、ICTは主に「見守りシステム」「介護システム」「給与計算・勤怠管理システム」の3つの形でよく使われています。その効果は極めて顕著であり、多くの業務改善につながっています。

それぞれ詳しく見てみましょう。

見守りシステム:
介護者が利用者の安全を確認するためのシステムです。遠隔モニタリング技術を使って、24時間体制で利用者の状態をチェックできます。

<メリット>
・利用者の安全確保と同時に介護スタッフの負担を軽減できる
・異常があった場合、迅速に対応できるため、利用者の安心感を高められる

 

介護システム:
介護業務をサポートするもので、介護記録の管理、ケアプランの作成、各種報告書の作成など、さまざまな業務を効率化します。

<メリット>
・手間のかかる事務作業を自動化できる
・事務作業の負担が軽減し、より多くの時間を利用者のケアにあてられる

 

給与計算・勤怠管理システム:
介護業界でも人事労務管理は重要な業務の一つです。このシステムで、シフト調整や勤務時間管理、給与計算などを一元的に管理できます。

<メリット>
・人事労務業務が効率的に行える
・人的ミスが減る
・労働時間が最適化される
・給与計算が自動化され、人材を介護業務に集中させられる

 

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介護におけるICT活用のメリット

介護 ICT活用2

介護現場でのICT活用は、業務の効率化、サービス品質の向上、そしてスムーズな情報共有と連携を可能にします。
それぞれのメリットについて具体的に見ていきましょう。

業務効率化

介護業務では、利用者情報の管理や記録、報告などの業務が必要ですが、ICTでこれらの作業を一元化・自動化することで、業務効率が大幅に向上します。
厚生労働省が行った調査でも、ICTを導入することで「業務管理が効率化された」「間接業務の時間が削減された」という声が多く挙がっています。

引用:厚生労働省「令和2年度ICT導入支援事業 導入効果報告まとめ」

サービスの質の向上

また、同調査では「支援の質が上がった」「直接ケアにあたる時間が増加した」との回答もありました。

ICT活用によって業務が効率化されれば、スタッフが利用者への直接的なケアに充てられる時間が増えます。ケアに集中できる時間が増えることで、個々の利用者に対するサービスの質の向上につながるでしょう。

スムーズな情報共有・連携

ICTを使って情報をデータ化することで、介護現場におけるスムーズな情報共有と連携が実現します。
さらに、「インカム」のような通信機器を導入することで、リアルタイムでの情報伝達が可能になり、事業所内のコミュニケーションも活発化します。

先程紹介した調査でも、情報共有にICTを取り入れることで「事業所内の情報共有が円滑になった」という声が見られ、スタッフ間でのスムーズなコミュニケーションに役立っていることがわかります。

介護におけるICT活用のデメリットと注意点

介護 ICT活用3

ICT活用は介護業界に多くのメリットをもたらしますが、注意すべき点やデメリットもあります。

導入コストがかかる

ICTを導入するには、ネット環境の整備や機器の購入などにかかる初期費用が必要です。この初期費用は介護施設にとって大きな負担となり、ICT導入の大きな障壁となることがあります。

しかし、業務効率化によるコスト削減やサービスの質の向上などを考慮すると、ICT導入の費用対効果は極めて高いと言えます。
導入する際には、初期投資だけでなく長期的なコストパフォーマンスも考慮することをおすすめします。

現場への教育が必要

ICTを介護現場に導入する際は、スタッフが適切にソフトやシステムを使えるようにするための教育が必要になります。特にパソコンなどのデジタル機器が苦手なスタッフがいる場合、最初はICTを導入することに抵抗やストレスを感じるかもしれません。

前出の調査でも、ICT活用でうまくいかなかったこととして「スタッフのICT化に対する意識統一やスキルが十分でなかった」「慣れるまで想定より時間がかかった」という声がありました。

ICTを導入する際には、十分な教育や研修が必要であり、まずはそのための時間とリソースを確保することが大切です。

介護におけるICT活用のポイント

介護 ICT活用4

ICT活用に際して起こりうる問題点を考慮に入れながら、ICTをうまく活用するためのポイントを紹介します。

補助金を活用する

ICTの導入には多額の費用がかかるため、国や地方自治体が提供する補助金や支援制度を活用することをおすすめします。

以下は、厚生労働省が主導するICT導入支援事業の概要です。この事業は、介護事業所がICTを導入することで業務を効率化し、同時に介護サービスの質を向上させることを目的としています。

介護事業所に対しては、ICT導入に必要な費用を補助しています。

補助対象 ・介護ソフト(記録、情報共有、請求業務で転記が不要であるもの、ケアプラン連携標準仕様を実装しているもの)

・情報端末(タブレット端末、スマートフォン端末、インカム等)

・通信環境機器等(Wi-Fiルーター等)

・その他(運用経費、クラウド利用料、サポート費、研修費、他事業所からの照会対応経費、バックオフィスソフト(勤怠管理、シフト管理等))

補助要件 ・LIFEによる情報収集

・フィードバックに協力

・他事業所からの照会に対応

・導入計画の作成、導入効果報告(2年間)

・IPAが実施する「SECURITY ACTION」の「★一つ星」または「★★二つ星」のいずれかを宣言等

補助上限額等 – 事業所規模(職員数)に応じて設定 ・1~10人 100万円

・11~20人 160万円

・21~30人 200万円

・31人以上 260万円

– 補助割合 ・一定の要件を満たす場合は、3/4を下限に都道府県の裁量により設定

・それ以外の場合は、1/2を下限に都道府県の裁量により設定

– 補助割合が3/4となる要件・・・以下のいずれかを満たすこと ・事業所間でケアプランのデータ連携で負担軽減を実現

・LIFEの「CSV連携仕様」を実装した介護ソフトで実際にデータ登録を実施等

・ICT導入計画で文書量を半減(R4年度拡充)

・ケアプランデータ連携システムの利用(R4年度拡充)

 
引用:地域医療介護総合確保基金を利用したICT導入支援事業

また、上記の他に以下のようなプログラムもあります。

介護ロボット導入支援事業
介護現場での労働負荷の軽減を目指し、介護ロボットの導入を支援します。ロボット技術を活用することで、高齢者の移動支援やリハビリテーション、生活支援などが行えます。

IT導入補助金
介護事業者も対象となる経済産業省の補助金です。ICTツールの導入に必要な費用の一部を補助しています。電子カルテや予約システム、リモートワーク支援ツールなど、幅広いツールが対象です。

これらの支援事業を利用することで、介護事業者はICT導入のコスト負担を軽減でき、その結果、業務効率化やサービスの質の向上を図ることができます。
ただし、それぞれの事業には申請条件や手続きが設けられていますので、利用する際は詳細な情報を確認しましょう。

現場への研修や周知を行う

現場への適切な研修と周知も重要なポイントです。スムーズなICT導入のためには、現場の理解と協力が不可欠です。

まずはICT活用に関する研修やレクチャーを行い、スタッフが新システムの基本的な操作方法を理解することが重要です。また、システムを利用する際のルールや意識すべき情報管理のポイントなども明確化し、現場に周知しましょう。

アウトソーシングを導入する

忙しい介護の現場において、通常の業務と並行してICT機器の導入や研修を行うのは困難な場合もあります。また、ICT機器を導入したものの機能を使いこなせていないというケースもあるでしょう。

そんな時は、PCスキルの高い人材が多くいるアウトソーシングサービスが役立ちます。

アウトソーシングサービスとは、企業の業務を代行するサービスのこと。アウトソーシングサービスにはそれぞれ特徴があり、中には介護業界のICT導入から運用、研修までをトータルでサポートしてくれる業者もあります。

さらに、介護事務などのさまざまな業務も代行してくれるため、人手不足の解消にも大いに役立つでしょう。
介護業界の支援に対応したアウトソーシングサービスは、以下で詳しくご紹介します。

介護業界のサポートなら「HELP YOUケア」

介護業務の効率化を検討している方には、高いパソコンスキルを持ったスタッフが揃うアウトソーシングサービス(外注)の活用もおすすめです。
ここでは、介護事業所のさまざまな業務をサポートする「HELP YOUケア」をご紹介します。

「HELP YOUケア」の特徴

HELP YOUケア」は、株式会社ニットが運営するオンラインの事務サポートサービスです。
さまざまなスキルを持った優秀なアシスタントが、福祉・介護業界で働くあなたの仕事をサポート・代行します。

サービスの特長
1.冗長性を担保できる「チーム制」のため、業務が滞るリスクがない
2.給与計算などの労務業務からSNS運用まで幅広い業務に対応可能
3.オンラインで簡単に業務を依頼できるので、最短5日で人材を確保

【HELP YOUケアの主なサービス内容】
■勤怠管理、給与計算
■採用サポート:求人媒体の選定、求人票の作成、応募者対応
■SNS運用:投稿文作成、画像・動画制作、リサーチ
■事務、経理、デザイン、システム開発など
※各サービスは、お客様のご要望によって組み合わせが可能です。

料金
月額:10万円~/実働時間:30時間~

 

「どんな業務をどこまで依頼できるか」など、ご質問はメール・電話にて無料で承っております。ぜひお気軽にご相談ください!

 

HELP YOU導入事例

秋田県で介護事業を展開する「株式会社あきた創生マネジメント」様の事例を紹介します。

【介護業界】事務の外注で担当者がいなくても仕事が回る体制へ

同社は業務が特定の人に依存する「業務の属人化」のリスクを抱えており、急な欠員が発生した場合に業務が滞るという課題を抱えていました。

この問題を解決するために、オンラインアウトソーシングの「HELP YOU」を導入し、給与計算と勤怠管理の業務を委託。
HELP YOUがチームで対応し、情報共有を行いながら代行したことで、急な欠員が出ても業務が滞るというリスクを軽減できました。

また、HELP YOUスタッフと連携してマニュアルを作成することで、業務フローや工数の可視化にもつながりました。
この事例から、アウトソーシングの導入は、単なる業務の効率化だけでなく、リスク分散や業務の見える化にも貢献することがわかります。

特に介護業界においては、人員不足や労働力の限界が問題となる場面が多いため、アウトソーシングの活用は有効な解決策となるでしょう。

まとめ

介護 ICT活用6

介護業界が直面している労働力不足の課題に対して、ICTの活用は有効な解決策となります。
ICTを活用することで、業務効率化やサービスの質向上、そしてスムーズな情報共有が可能となり、人材の有効活用が実現できます。

ICTの導入に際しては、導入にかかるコストや手間を考慮しながら、補助金の活用や現場への研修・周知を徹底することが重要です。
また、アウトソーシングの活用も効果的な手段です。アウトソーシングによってICTのスムーズな導入・運用が可能になり、人手不足の解決にもつながります。

人手不足に悩む介護業界の方は、ぜひICTやアウトソーシングの活用を検討して、介護の質と効率性を向上させることをおすすめします。労働力不足の課題に対して適切な対策を講じることで、より良い介護サービスを提供できるでしょう。

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