2024年介護報酬改定のポイントと対策をわかりやすく解説!
介護報酬改定2024年版をわかりやすく解説します。
介護を取り巻く状況に合わせて調整される介護報酬改定。介護事業者にとって、改定の詳細とその影響を把握し、事前に対策しておくことは重要です。
「2024年の介護報酬改定で何が変わり、どんな影響を及ぼすのか」
「2024年の介護報酬改定に向けて、どんな対策をすべきか」
このような疑問を解消するために、今回は介護報酬改定の基本や2024年度の主な変更点とその対策をわかりやすく解説します。
介護報酬改定に動揺せず、安定した事業運営を行いたい方はぜひご一読ください。
介護報酬改定とは
介護報酬改定について説明する前に、まず「介護報酬」の定義を確認します。
介護報酬とは、事業者が利用者(要介護者又は要支援者)に介護サービスを提供した場合に、その対価として事業者に対して支払われるサービス費用をいう。
引用: 厚生労働省「介護報酬について」
つまり、介護報酬改定とは介護サービスの対価を再評価し、それに基づき調整する制度のことです。以下より、介護報酬改定のスケジュールや改定が行われる背景を解説します。
【介護報酬改定のスケジュール】
介護報酬改定は3年ごとに見直され、その都度、介護サービスの現状や社会状況に応じた見直しが行われます。前回は2021年に実施され、次回は2024年に行われる予定です。
【介護報酬改定の背景】
介護報酬改定の背景にあるのは、少子高齢化です。高齢化社会では介護サービスのニーズが向上します。そして、そのニーズを満たすには介護する人材や財源が欠かせません。
しかし、高齢化と同時に少子化が進む日本では、慢性的な人材・財源不足に陥っています。その不足を補うために、定期的な費用の適正化(介護報酬改定)を行っているのです。
2024年介護報酬改定の主な変更点
2024年の介護報酬改定では、さまざまな変更が計画されています。その中でも、主な変更点は以下の4つです。
- 福祉用具やケアプラン費の見直し
- 小規模法人の大規模化推進
- 多床室の室料負担見直し
- 人員基準の再評価
この章では、各変更点をわかりやすく説明していきます。
福祉用具やケアプラン費の見直し
2024年の介護報酬改定では、福祉用具および、それに関連するケアプラン費が見直される予定です。具体的な内容は次のとおりです。
1.ケアプランが福祉用具の貸与のみの場合、介護報酬が引き下がる
財務省は2024年の介護報酬改定に先立ち、「福祉用具貸与サービスにかかる負担は他のサービスにかかる負担よりも軽い」と指摘しました。
よって今回の改正で、サービス内容に適した報酬体系へ変更(=介護報酬の引き下げ)となる見込みです。
2.福祉用具の一部(歩行補助杖、歩行器、手すりなど)を貸与から販売へ
次に予想される変更点は、福祉用具の一部が貸与から販売へ移行することです。福祉用具に関して、財務省は以下の報告をしています。
- 福祉用具貸与は購入と比べ、多くの費用がかかっている
- 予算執行調査によると、福祉用具貸与のみのケアプランは全体の約6%、そのうちの約7割は廉価な品目である
- 廉価な福祉用具を貸与から販売に変更すると、ケアプラン作成などのケアマネジメント費用をなくせる
以上のことから、安価な福祉用具(歩行補助杖、歩行器、手すりなど)はレンタルではなく購入対象へ変更となる可能性があります。
福祉用具を販売に変更すると、高齢者とケアマネージャーのモニタリングの機会が失われる恐れがあります。高齢者の孤立を防ぐ対策も必要となるでしょう。
参考:
財務省「財政制度分科会(令和4年4月13日開催)資料『社会保障』」
財務省「財政制度分科会(令和2年11月2日開催)資料『社会保障について2(介護、障害福祉等)』」
小規模法人の大規模化推進
小規模法人の大規模化推進も変更点の一つです。この促進により、費用効率の改善が期待できます。
現在の介護業界には幅広い事業が参入していますが、その事業者の多くは小規模法人です。小規模法人は業務効率化ができておらず、サービスのクオリティも向上していないとみなされています。
財務省発表のデータによると、小規模事業よりも大規模事業や事業所の数が多い法人の方が平均収支率が高いことが判明しているのです。
大規模法人であれば管理部門の一元化や効率的な人員配置なども可能です。事業を効率化している法人を指標とし、介護報酬を定めていくことも検討されています。
大規模化が進むと、利用者は高品質なサービスを受けることができ、事業者は収支率の向上が見込めます。ただし、大規模化には十分な計画と準備が欠かせません。設備の拡充や体制の構築など対策すべきことが多く出てくるでしょう。
多床室の室料負担見直し
次の変更点は、多床室の室料負担の見直しです。
現在、介護老人保健施設・介護医療院・介護療養病床の多床室は、介護保険制度によって水道光熱費のみを利用者が負担する形となっています。一方、特養老人ホームの多床室を利用する場合は、利用者が室料も負担しています。
この不平等を撤廃するために、2024年の改定において、どの施設であっても利用者が室料と水道光熱費を負担するよう、見直しが行われます。
改正される場合は、多床室利用者の負担が増えるため、多床室の基本報酬が引き下げられる可能性があります。
人員基準の見直し
2024年の介護報酬改定では、人員基準の見直しも予想されています。具体的には、介護施設の利用者3人に対して1人の介護職員または看護職員を配置する人員配置基準(3対1)が4対1などに緩和されるということです。
そして、緩和の際は以下の影響が考えられます。
- 人手が足りない介護施設の運営が継続可能になる
- 利用者の安全確保の徹底
- 早急なITツールの導入が求められる など
見送られた改定案
介護報酬改定では、状況の変化や関係者間の意見の違いから見送られる改正案もあります。2024年の改定で見送られた案についても今後の動向をチェックしておきましょう。
【要介護1・2の総合事業への移行】
まずは、要介護1・2の生活援助サービスを介護保険の給付から外し、市区町村の介護予防・日常生活支援総合事業へ移す案についてです。移行が実現すれば、市区町村が独自にサービス基準や報酬を決定でき、介護スタッフの間口が広がると期待されていました。
しかしながら、この案は賛否両論が多く2027年度への見送りが決定。今後はさらに踏み込んで議論される見込みです。
【ケアプランの有料化について】
ケアプランの有料化も反対意見が多く、今回は見送られることとなりました。現状の在宅介護サービスでは、ケアプランは自己負担になりません。
一方、施設サービスなどケアマネジメントが包含されている場所では利用者が負担するサービス料金に含まれます。この不平等を是正するために有料化が検討されていました。
とはいえ、有料化した場合はケアマネジメントの利用控えが起こり、介護者の早期発見・対応が難しくなるという懸念も現場から多く寄せられています。
この件に関しては、2027年度の第10期介護保険事業計画スタートまでに結論が出る見通しです。
【利用者の負担増加】
介護報酬改定では、利用者の負担を原則1割(※)から原則2割に増加する案も検討されています。
※一定以上の所得を得ている場合は、2割もしくは3割
原則2割負担となった場合、介護保険の給付は現在よりも抑えられるでしょう。しかし、介護を必要とする人が利用を控えてしまう可能性も。経済面での自立が困難な高齢者への影響が考慮され、改正は見送られました。
今後の見通しとして、厚生労働省は2023年の年末に方向性を明らかにすると発表。最短2024年度から、高所得者の保険料の引き上げや、自己負担が2割となる人の対象範囲の拡大が見込まれます。
2024年介護報酬改定に向けた対応策
ここまで2024年介護報酬改定の変更点を見てきました。これらの変化に対して、介護事業者はどう対応していけばよいのでしょうか。早急に行うべき対応策を2つご紹介します。
BCP策定
BCP(事業継続計画)とは、未曾有の災害や緊急事態でも事業を継続するために作成する計画書のことです。
BCPマニュアルを策定することで、介護現場のリスクを洗い出せる、緊急時の優先順位を明確化できるといったメリットがあります。
そして、このBCP策定は2021年の介護報酬改定時に運営基準として盛り込まれ、3年間の経過措置がとられていました。つまり、2024年4月1日までに、どの介護事業者も必ず策定しておかなければならないものです。
BCPマニュアルを策定しなかった場合、運営の停止あるいは介護報酬の減算などが科せられる可能性もあるため、早急に取り掛かりましょう。(※)
※現在、BCP策定に関する具体的な罰則は明らかになっていません。2023年秋から冬にかけて社会保障審議会で審議されていく予定です。
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ICTの活用
介護現場におけるICT(情報通信技術)の活用も重要です。介護スタッフの業務負担の軽減や、事業コスト削減による生産性の向上が期待できます。
ICT利用はBCPにも有効です。災害時や緊急事態下でも、ICTを使った遠隔コミュニケーションや情報管理システムで連携して対処ができます。
しかし、ICTの導入や運用には専門的な知識と経験が必要です。「何をどのように活用したらいいか分からない」「導入しても使いこなせる自信がない」という場合は、サポート手段の一つとして、ICTに強いアウトソーシングなどの支援サービスの利用も検討してみましょう。
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まとめ
2024年の介護報酬改定では、主に次の4つが改定される見通しです。
- 福祉用具やケアプラン費の見直し
- 小規模法人の大規模化推進
- 多床室の室料負担見直し
- 人員基準の再評価
これらの改正に対応するために、「BCPマニュアル策定」と「ICT活用」は必須項目といえます。2024年の介護報酬改定を乗り越え、より良い事業運営を目指しましょう。
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