人手不足の業界とその理由は?今すぐ行うべき4つの対策【2024最新】

近年、さまざまな業界で人手不足が叫ばれています。その原因の一つは、少子高齢化による労働人口の減少、つまり働き手不足によるものです。

実際に、
「求人を出しても良い人材が見つからない」
「そもそも応募が来ない」
「人手不足で業務量が増え、過重労働になっている」

といった問題を抱えている企業も多いのではないでしょうか?

そこで本記事では、人手不足の現状や特に人手不足が深刻な業界、人手不足解消に向けて今すぐ行うべき4つの対策について具体的に解説します。
人手不足の原因や対策方法を知り、自社に最適な方法で人手不足を解消していきましょう。

人手不足の現状と原因

人手不足 業界1

まずは、統計から人手不足の現状とその原因について見ていきましょう。

人手不足の現状

2022年の総務省の調査によると、労働力人口(※15歳以上人口のうち就業者と完全失業者の合計)は前年に比べ、5万人減少しているとされています。
特に、働き世代ともいわれる15〜64歳の労働力人口は、前年に比べて6万人も減少しているのです。

引用:総務省統計局「労働力調査(基本集計)2022年(令和4年)平均結果の概要」

なお、男女別でみると、男性の労働力人口は22万人の減少となってるものの、女性は15万人の増加となっています。育児休業制度の充実や働きやすさの改善など、働き方を取り巻く時代の変化も、女性の就業拡大に関係しているようです。

人手不足の原因1.少子高齢化

人手不足の原因の一つは、少子高齢化による働き手の不足です。

内閣府のデータをみると、日本の生産年齢人口(15〜64歳)は1995年の8,716万人をピークとして減少に転じ、その後、国内全体において働き手が不足していることが分かります。

引用:内閣府「令和5年版『高齢社会白書』第1節 高齢化の状況」

さらに、2025年には第一次ベビーブーム期(1947年〜1949年)に生まれた団塊世代が75歳の後期高齢者となり、超高齢化社会を迎える「2025年問題」が起こるといわれています。
国民の約5人に1人が75歳以上になることで、医療や介護などの需要の増加に伴う、社会保障費の負担増加や人材不足の深刻化が懸念されています。

人手不足の原因2.企業と求職者のミスマッチ

東京労働局「職業別有効求人・求職状況」の求人倍率をみると、人手不足の業界がある一方で、事務従事者などは人が余っている状況にあることが分かります。

これは、企業と求職者の間で求めるスキルや労働条件などのミスマッチが起き、人手不足につながっていると考えられます。

参考:労働局「職種別有効求人・求職状況(一般常用)」

人手不足が深刻な業界とその理由

人手不足 業界2

前出の東京労働局「職業別有効求人・求職状況」の求人倍率をみると、ほぼ全ての職種で、求職者よりも求人数が大きく上回っています。

その中でも特に求人倍率が高い、すなわち人手不足になっている業界とその理由について解説します。

物流・運送業

現在、物流・運送業に欠かせないトラックドライバーの人手不足が深刻です。国土交通省のデータによると、トラックドライバーの有効求人倍率は全職種の2倍近い数値になっています。

また、トラック業界で働く人の年齢層は約半数が40〜54歳となっており、女性の就業者数も他の産業と比べて極めて低いのが特徴です。

ドライバーの人手不足の原因としては、賃金水準が全産業平均に比べて低い一方で、年間労働時間は長時間という、過酷な労働環境にあると考えられます。

さらに物流業界で問題となっているのが「2024年問題」です。働き方改革法案により、2024年4月からドライバーの労働時間に上限が課されました。
労働環境の改善につながる半面、物流・運送業界の売り上げ減少やドライバーの収入減などが懸念されており、今後ますます人手不足につながる可能性があります。

▼物流業界の人手不足解消の事例を知りたい方はこちら

【物流業界】採用業務の外注で体制を強化!

参考:
国土交通省「トラック事業の概要」
公益社団法人 全日本トラック協会「日本のトラック輸送産業 現状と課題 2022」

建設業

国土交通省の調査によると、令和2年の建設業就業者数は492万人となっており、平成9年のピーク時から比べると約28%も減少しています。

建設業の人手不足の理由としては、体力的に厳しい仕事というイメージや、給与水準が低いことなどが考えられます。実際に年間の総実労働時間は全産業と比べても約2割も長くなっています。

建設業では、建設技術などのノウハウ継承も重要ですが、働き手の高齢化(55歳以上が約36%、29歳以下が約12%)により、次世代への技術継承も課題になっています。

参考:国土交通省「最近の建設業を巡る状況について」

サービス業(飲食業・宿泊業)

サービス業の中でも、特に飲食業・宿泊業が人手不足となっています。東京商工リサーチの調査によると、特に飲食業・宿泊業ではパート・アルバイトなどの非正規社員の人手不足が深刻化しています。

飲食店や旅館・ホテルなどでは、立ち仕事も多く体力が必要です。また、多くの人と接するため精神面でも疲弊しがちです。
そのような労働環境下にもかかわらず、他の業界と比べて給与水準が低い傾向にあるのも、サービス業の人手不足の一因といえるでしょう。

また、飲食・宿泊サービス業は、他の業種と比べて入職率・離職率ともに大きく上回っています。つまり、入職しやすい反面、離職(転職)もしやすい業種であるがゆえに従業員が定着せず、結果として慢性的な人手不足となっているのです。

現在、ホテル業界においてもアフターコロナによる需要回復の兆しが見えており、インバウンド需要も拡大しています。今後も飲食業界や宿泊業界での人手不足はさらに強まると予想されます。

参考:
株式会社東京商工リサーチ「~ 2023年 企業の『人手不足』に関するアンケート調査 ~」
厚生労働省「産業別入職率・離職率(令和4年(2022))」

医療・介護・福祉

高齢化による需要の拡大に対して供給が追い付いていないのが、医療・介護・福祉業界です。

厚生労働省によると、65歳以上の人口が3割以上になるとされる2040年には、介護職員の必要数が69万人不足するというデータも発表されています。
特に都市部などの人口密集地がより人手不足となっており、介護職員一人にかかる負担が大きく、過重労働となっている現実があります。

医療・介護・福祉業界では夜勤を伴うことも多く、本来は従業員に負担がかかりにくい3交代制が理想とされていますが、実際に3交代を行っている施設は全体の6%にとどまっています。
このような体力的な負担と共に、人の命を預かるという精神的な負担も、医療・介護・福祉業界の人手不足につながっているようです。

▼介護業界・医療業界の人手不足解消の事例を知りたい方はこちら

【介護・医療】事務の外注で働きやすい職場づくりに注力できた

参考:
厚生労働省 「第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」
日本経済新聞「介護施設の長時間労働、7割が2交代制・夜勤16時間超」

IT系

経済産業省によると、IT業界での人材不足は、2030年には約79万人にまで拡大すると言われています。
IT市場の急成長によって需要が高まる中、知識やスキルを持ったIT人材の不足が続くと、企業価値だけではなく、国としての競争力の低下も危ぶまれます。

また、デジタルツールを活用したDX化の必要性が叫ばれる中、そのDXを推進する人材確保も課題となっています。

調査によると、 DXを推進する人材が「大幅に不足している」と答えたのが、アメリカでは3.3%に対し、日本は49.6%。IT業界の人材不足は、デジタル後進国ともいわれる日本企業の大きな問題となっているのです。

引用:IPA 独立行政法人 情報処理推進機構「DX白書2023」

参考:経済産業省「IT分野について」

中小企業

中小企業では、2013年以降全ての業種で従業員不足の傾向がありました。コロナ渦で一時的にプラス傾向にあったものの、近年ではまたマイナス傾向に戻っており、再び人手不足感が強まっています。

引用:経済産業省「令和4年度(2022 年度)の中小企業の動向」

中小企業が人手不足の理由には、上述のように、そもそもの労働力人口が減少しているという点があります。
中小企業の安定性・将来性を危惧したり、収入面や福利厚生などが大企業に劣るイメージがあることも中小企業の人材不足の理由の一つでしょう。

人手不足による企業への影響

人手不足 業界3

人手不足が慢性化すると、企業経営や労働環境に悪い影響を与えることも少なくありません。ここからは、人手不足によって起こる企業への影響について解説します。

労働環境の悪化

人手不足の業界では、一人あたりの仕事量が多く、従業員が日々業務に追われているという状態も珍しくありません。
そのため、従業員の残業が慢性化したり、有給休暇を消化できず休息を十分に取れないなどの問題が発生しています。

このような状態が続くことで疲労が蓄積し、従業員のモチベーション低下、睡眠不足やストレスによるメンタルヘルスの不調などの悪影響を与える可能性があります。

離職者の増加

内閣府の調査によると、人手不足の企業ほど生産性や賃金水準が低く、離職率が高くなっているというデータがあります。賃金水準が低いことで、その求人への魅力を感じられず応募が来ないなど、人手不足がさらなる人手不足を招くという悪循環に陥っているのです。

また、人手不足は企業の生産性にも影響を与えます。企業全体では人手が足りていても、一部の職種や年齢の人材が過剰もしくは不足している場合、企業全体の労働生産性が低くなってしまう可能性があるようです。

参考:内閣府「第1章 日本経済の現状と課題 第3節」

事業縮小や倒産のリスク

人手不足を解消できなかった場合、業務に携わる従業員が少ない状態が続きます。万が一、従業員が体調を崩すなどした場合、対応できる業務量は減少してしまいます。

従業員一人一人が対応できる業務量にも限界があるため、現在の状態を維持することが難しくなり、結果として事業の縮小や倒産のリスクなどが考えられます。

人手不足を解消する4つの対策

人手不足 業界4
ここからは、人手不足の業界が今すぐ行うべき4つの対策について解説していきます。

人事制度の見直し

人手不足を解消するための解決策の一つは、人事制度の見直しです。

年功序列ではなく、個人のスキルや努力を正当に評価し、業務内容や成果に見合った評価をすることで従業員のモチベーションが上がります。従業員の満足度がアップすれば、離職率の軽減にもつながるでしょう。

また、採用の要ともいえる人事制度を変えることで、より良い人材獲得ができるようになります。良い人材を確保することで業務の質や生産性も向上するなど、企業にとって大きなプラスに結び付いていくでしょう。

女性やシニア層、外国人の活躍推進

「国土交通白書2020」によると、生産年齢人口が減少する中、女性や高齢者の就業率は上昇しています。女性やシニア層が働きやすい環境づくりや施策(産休育休の促進、テレワークの推進、時短勤務など)を打つことも、人手不足の解消に効果的といえます。

また、外国人材の雇用も人手不足解消につながります。実際に、日本国内の外国人労働者数は年々増加しており、産業別に見るとサービス業・建設業・医療福祉など、人手不足業界ですでに多くの外国人労働者が活躍しています。

参考:
厚生労働省「『外国人雇用状況』の届出状況まとめ」
国土交通省「国土交通白書2020」

DX化・デジタル化の推進

働き手をすぐに増やせない場合、従来の業務を効率化することで少ない人手でも回るようにすることが重要です。
最近では、業務効率化のためにデジタル技術を活用したDX化(デジタルトランスフォーメーション)の推進が求められつつあります。

具体的には、

  • 書類をペーパーレス化する
  • 保存データをクラウドで管理する
  • Web会議を導入する
  • ビジネス向けのチャットツールを導入する

などが挙げられます。

このように、自社に最適なITツールを導入するなど、DX化を推進することで業務効率や生産性を上げることが可能です。

アウトソーシングを導入する

アウトソーシングを導入し、社内の一部を外部に委託することで、よりスピーディーに人手不足を解消できます。

例えば、以下のような業務をアウトソーシング業者に外注できます。

【アウトソーシングできる業務の例】(クリックで拡大できます)

また、アウトソーシングを活用することで、人手不足の解消だけでなく、さまざまなメリットを得ることができます。

【アウトソーシングのメリット】

  • 業務過多で時間に追われていた従業員がコア業務に集中できる
  • 専門スキルを持った人材をすぐに活用できるため、採用や教育の手間がかからない
  • 経験豊富なプロへの外注で業務の効率や質が上がる
  • 時間に余裕ができることでケアレスミスなどの防止につながる

このように、アウトソーシングをうまく活用することで、人手不足の解消とともに業務の効率化などを進めることができます。

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まとめ

人手不足 業界5

人手不足の現状と人手不足がより深刻な業界、そして人手不足を解消する方法について解説しました。

人手不足の原因は、少子高齢化による労働人口の減少が大きな要因の一つです。まずは人事制度を見直し、賃金を上昇させ、労働環境を改善するなど、従業員や求職者にとって魅力・やりがいのある職場環境を整えることが大切です。

そのうえで、DX化やアウトソーシングの活用により、業務効率化や人材不足解消を図れば、企業の労働生産性も高まり、売上も増加するでしょう。

人手不足が大きな課題となっている企業は、ぜひ本記事を参考にしてください。

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