インサイドセールス立ち上げの手順|5つのステップと3つの成功ポイント
昨今、営業活動の効率を向上させる手法として注目されているのが、「インサイドセールス」です。「内勤営業」とも呼ばれるインサイドセールスは、移動スケジュールを考慮する必要がなく、1日で対応できるアポイント数も増やすことができます。
しかし、インサイドセールスは比較的新しい営業手法のため、自社にノウハウがなく下記のような悩みを抱えている方もいるのではないでしょうか。
「インサイドセールスのチームを立ち上げたいけど、手順がわからない」
「立ち上げに時間や手間をかけたくない」
こういった営業担当の方に向けて、本記事ではインサイドセールスを立ち上げる手順を5つのステップに分け、わかりやすく解説します。あわせて、インサイドセールス立ち上げの成功ポイントも3つご紹介します。
記事を読むことで、御社に合ったインサイドセールスの立ち上げ方がイメージできるようになるでしょう。ぜひ参考にしてください。
インサイドセールスとは
インサイドセールスとは、相手先を訪問せず、電話やメール、オンライン会議などで営業活動をする内勤型営業のことです。これに対し、相手先を訪問する外勤型営業は、フィールドセールスと呼ばれます。
インサイドセールスには、大きく3つの役割が期待されます。
- 既存顧客や問い合わせがあった顧客の中から、受注につながる確度の高い見込み客(リード)を発見し、フィールドセールスにつなぐ役割
- 確度の低いリードに対し、適切な情報提供やコミュニケーションを取り続け、関係性を構築しながらニーズを発掘する役割
- 営業担当やカスタマーサクセスに代わり、既存の顧客を継続してフォローする役割
3つ目の役割の中では、次回の購入や追加の提案の可能性が高まるまで、良好な関係を維持することが求められます。
インサイドセールス立ち上げの手順1.目的や役割の明確化
ここからは、インサイドセールス立ち上げの手順を段階に分けて解説します。
自社でインサイドセールスを立ち上げる時、どのようなことに気をつければよいのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
課題と目的を明確にする
まずは自社の営業組織・営業活動における課題を把握し、インサイドセールスを立ち上げる目的を明確にしましょう。
インサイドセールスの立ち上げが効果をもたらす営業課題には、次のようなものがあります。
・顧客リストが管理できていない
展示会などで獲得した顧客リストが眠ったままになっている、営業マンが交換した名刺データがそのままになっているといった時、インサイドセールスは効力を発揮します。
・新規開拓の効率が悪い
営業案件の創出から商談、クロージングといったさまざまな状況の顧客を一人の営業担当が抱えている場合、進捗管理が複雑化し、新規開拓の効率が悪くなります。インサイドセールスを導入することで、営業担当者は受注獲得に専念できます。
・既存顧客をフォローしきれない
多くの場合、営業活動のKPIには売上が設定されます。その結果、営業担当者は新規顧客の獲得にリソースを割かれ、既存顧客のフォローがおろそかになりがちです。インサイドセールスがあれば、既存顧客とのコミュニケーションを維持することができます。
・営業活動が属人化している
商談からクロージングまでのプロセスを一人の担当者に委ねてしまうと、営業活動の管理ができず、属人化が進む恐れがあります。インサイドセールスによって適切にプロセスを分業化でき、営業活動の標準化を図ることができます。
このように、営業活動における課題にはさまざまなものがあります。自社の課題をきちんと把握し、まずは「インサイドセールスを導入して、自社の営業組織や営業活動をどう改善したいのか」という目的を明確にすることが大切です。
そして、目的が明確になったら、インサイドセールスで取り組む商材・サービスを決めていきます。
インサイドセールスの役割を決める
インサイドセールスの目的や商材が決まったら、次にインサイドセールスが担う役割を決めます。
インサイドセールスの役割は、アプローチする顧客の種類から「SDR」と「BDR」の2つに分けられます。
SDR(Sales Development Representative)
SDRは、獲得したリードにアプローチして商談成立を目指す営業手法です。この「獲得した」というのは、以下のように、相手がすでに自社の商品・サービスに関心があることが分かっている場合です。
- 自社のWebサイトやSNSに問い合わせがあった
- 展示会などで名刺交換をした
- 自社のセミナーに参加申し込みがあった・来場した
「反響型」とも呼ばれるSDRでは、自社に関心を持っているリードを対象とします。そのため、購入意欲が高いリード獲得につながりやすく、安定した売上に貢献します。
BDR(Business Development Representative)
BDRは、新しい顧客を見つけるためにインサイドセールスからアプローチする手法で、「新規開拓型」とも呼ばれます。
BDRは、電話やメール、展示会、セミナーといった接点を自ら作り、アプローチすることでリードを発見し、商談成立につなげていきます。
関心のある相手を見つけ出す苦労はありますが、大企業などでキーマンがわからない企業でも積極的にアプローチするため、結果として大きな成果を出しやすいという特徴があります。
SDRとBDRの違いを整理すると、以下のようになります。
SDR(反響型) | BDR(新規開拓型) | ||
セールスの対象 | リード(見込み客) | アプローチ先の絞り込み先が難しい企業 | |
企業規模 | 不特定 | 主に大企業 | |
ターゲットの状態 | 認知 | 認知あり | 不明 |
ニーズ | 顕在ニーズがある | 潜在ニーズを探る | |
購入意欲 | 高い | 不明 | |
インサイドセールスの役割 | リードから受注を獲得する | 決裁者にアプローチし、新規受注を獲得する | |
アプローチ方法 | ・直接的な電話やメール、メルマガ配信 ・オウンドメディアやSNSなどのチャネル |
・代表電話などへの電話 ・キーマンへの手紙 ・Web・サイトの問い合わせフォームへのメール |
|
KPIの例 | 商談件数など | 有効リード獲得数など | |
商談成立までの時間 | 比較的短い | 一般的に長い |
また、自社にマーケティング部門やフィールドセールスがある企業では、営業プロセスの中のどの場面でインサイドセールスを組み込むかも設計しましょう。
役割を分けて相互に連携することで、業務の効率も上がり、受注率の向上が期待できます。
インサイドセールス立ち上げの手順2.シナリオ設計
訴求する商品やインサイドセールスの役割が決まったら、インサイドセールスのシナリオ設計に移りましょう。シナリオ設計では、リードを育成する道筋を決め、いつどのような情報提供をするかを設定します。シナリオ設計では、リードとの関係を作るために、以下のポイントを明確にします。
- ターゲットは誰か
- 提供する情報は何か
- どのタイミングで情報提供するか
- どうやって提供するか
- アプローチする対象を決める
アプローチする対象を決める
シナリオを設計するにあたり、まずはアプローチするターゲットを具体的に定めましょう。
企業の情報や、顧客の行動(セミナーへの参加、サイトへの訪問、資料ダウンロードなど)から顧客のフェーズを推定し、受注までの確度が高い顧客を絞り込みます。
対象が曖昧だったり確度が低い顧客だと、シナリオ設計にも時間がかかり、精度も低くなります。
情報提供について決める
リードを獲得・育成するためには、適切なタイミングでリードが必要とする情報を提供することが重要です。「いつ」「どのような情報を」「どのような形態(チャネル)で」提供するかを決めましょう。
インサイドセールスで提供する情報には、以下のようなものがあります。
- 導入のメリットなど、お役立ち情報をまとめたコラムやブログ記事
- 商品・サービスの導入事例
- 顧客インタビュー記事
- セミナー情報
- 無料トライアルの告知
- キャンペーンの案内
- バージョンアップなど、関連する商品・サービスに関する情報
インサイドセールス立ち上げの手順3.チーム編成
シナリオが決まったら、インサイドセールスのチームを編成しましょう。インサイドセールスのように新しい営業手法を取り入れる場合、スキルや特性に合わせて適切な人材をアサインすることが重要です。
インサイドセールスに向いている人材としては、以下が考えられます。
- BtoB営業の経験者
- 営業経験やテレマーケティング、接客業の経験者
- ヒアリングから、顧客の潜在ニーズを汲み取ってコミュニケーションができる
- 業務処理の正確さ・速さに長けている
- 継続的にチャレンジできる
- データや数値に基づく事実ベースで考え、報告できる
- 他部門(フィールドセールス、マーケティング)との情報共有や連携ができる
なお、フィールドセールスの経験者がインサイドセールスに向いているとは限りません。なぜなら、インサイドセールスに求められるのは、短期間で受注を獲得することよりも、継続的なコミュニケーションを通して顧客からの信頼を得る能力だからです。
また、インサイドセールスのチームを立ち上げる時は、小さな組織から始めるスモールスタートがおすすめです。
インサイドセールスで安定的な成果を上げるには、担当者の確保・育成とノウハウの蓄積が重要です。はじめから大規模チームで立ち上げようとすると、多くの準備期間が必要になります。
社内でメンバーをアサインする時には、担当者の適性などを見ながらPDCAサイクルを回していくのがおすすめです。
インサイドセールス立ち上げの手順4.KPI設定
インサイドセールスを導入して営業目標を達成するためには、KPIの設定が重要になります。KPIでは、量と質のKPIをどちらもバランスよく追うことが重要です。
量と質のKPIには、以下のようなものが想定されます。
量のKPI |
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質のKPI |
|
「量」のKPIの方が成果を可視化しやすいため、初期段階ではそちらを追う方がチームのモチベーションアップにつながります。「質」のKPIは、成約後に受注金額が判明するまで数値として確定せず、評価に時間がかかることに注意しましょう。
ここからは、インサイドセールスで用いられることの多い、代表的なKPIについて説明します。
商談化数・商談化率
商談獲得数(商談化率)とは、電話やメールなど、インサイドセールスからのアプローチにより、商談につなげられた回数・比率です。
営業活動を分業する中で、インサイドセールスに課せられた役割は、顧客との関係の構築です。関係構築の成功の可否を示す最終的な指標が、商談化数や商談化率になります。
受注数・受注率
受注数・受注率とは、文字通り案件を受注した数や比率です。
インサイドセールスでは、直接の受注はフィールドセールスに任せ、自チームでは担当しないことが多いかと思います。しかし、昨今は売上や事業計画の達成を目的として営業を分業化する上で、インサイドセールスでも受注をKPIとして設定する動きがあります。
インサイドセールスが受注数・受注率をKPIに据えることで、受注確度を意識した商談設定を行うようになり、顧客へのヒアリングの精度向上、フィールドセールスとの連携向上が見込めます。
メール開封率
メール開封率とは、送信したメールが開封された割合です。開封率からは、顧客からの関心の高さが把握できます。
インサイドセールスでは、顧客育成の手段にメルマガ配信を行い、メール開封率をKPIに設定することがあります。この時、メールの開封数より開封率をKPIとするのが一般的です。
メルマガの開封率は、同じ内容でも下記の要素が影響しやすいため、A/Bテストなどを繰り返しながら、開封率が高まる条件を探っていきます。
- 件名
- 送信した曜日
- 送信時間
- 送信ターゲット(コンテンツの出し分けをしている場合)
架電数
電話をかけてアポイントを取る場合、架電数もKPIの指標になります。架電数は活動量の目安と捉えられます。
架電数の多さは、多数の顧客にアプローチしている証拠となります。架電数を増やすためには、電話のタイミングや内容を工夫することが大切です。
インサイドセールス立ち上げの手順5.ツールやサービスの選定
シナリオ設計ができ、チームやKPIも決まったら、最後にインサイドセールスの運用に使うツールを選定します。
インサイドセールスでは、大量かつ長期間にわたって顧客とコンタクトを取るため、データ管理が肝となります。さまざまなデータを蓄積・分析することで、より適切なアプローチができるようになるでしょう。
また、フィールドセールスやマーケティング部門と連携するためにも情報共有は重要です。
インサイドセールスで用いるツールにはいくつかの種類があります。それぞれのツールの概要やメリットを解説します。
MAツール
MA(Marketing Automation)ツールとは、見込み顧客の獲得から育成、抽出といったマーケティング活動を自動化するツールのことです。顧客情報を一元管理しながら、商談獲得数の最大化に寄与します。
見込み顧客に関する詳細な情報やアプローチ内容を自動的に視覚化できるため、膨大なリストの絞り込みや、目的やシナリオに合わせた適切なターゲットの選択ができます。
SFAツール
SFA(Sales Force Automation)ツールとは、営業活動を可視化し、営業業務を総合的に支援するツールです。
商談に関するデータなど、営業活動全般についての情報を管理したり、それらの情報を分析してチーム内で共有したりできます。
これまで営業担当者が個別に管理していた情報をチームで共有することで、属人化を防げるのもSFAのメリットです。
CRMツール
CRM(Customer Relationship Management)ツールは、自社と顧客とのやりとりを集約し、良好な関係性を構築するためのツールです。
CRMツールでは、顧客情報を一元管理することで、顧客情報の分析やプロモーション管理などができます。
顧客の潜在的なニーズを可視化して密度の濃い提案へつなげることや、アフターフォローなどの提案を行うタイミングをはかることで、顧客満足度を向上させることが可能です。
インサイドセールス立ち上げの成功ポイント
最後に、インサイドセールスの立ち上げを成功させる上で重要なポイントを3つ紹介します。
周囲の理解や協力を得る
インサイドセールスは、マーケティングとフィールドセールスの橋渡しを行うため、各部門との連携がとても重要です。
インサイドセールスが担当する業務は、もともとフィールドセールスやマーケティング部門が担っていたものも少なくありません。
場合によっては、社内でインサイドセールスの役割や有用性が理解されていないこともあります。
インサイドセールスの目的や目標、進捗状況を各部門としっかり共有し、認識を合わせることが必要です。
トークスクリプトを作成する
インサイドセールスでは、顧客との関係構築が目的になるため、トークスクリプトが必要不可欠です。
トークスクリプトを作ることで、トークのどこで断られてしまったかなどの改善点が浮き彫りになります。
また、よいスクリプトを組織内で共有することで、全体のスキルアップにつながります。精度の高いトークスクリプトが用意できれば、新人社員がベテラン社員と同等の内容を話すことができ、成功確率を高めることもできます。
なお、インサイドセールスは、電話を使った非対面の営業手法という点でテレアポと混同されがちですが、目的と業務範囲に大きな違いがあります。
インサイドセールスは、商談の実施に向けて非対面で顧客のニーズを把握したり、顧客の情報を聞き出したりするのが目的です。
対するテレアポは、ゼロからターゲットとの接点を作りだし、初回アポイントの獲得に注力します。このため、両者のスクリプトは大きく異なります。
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外注を活用する
インサイドセールスはまだ新しい手法のため、社内に経験やスキルのある人がいない場合も少なくありません。また、優秀な経験者を採用するのが難しい場合もあります。
そのため、インサイドセールスを外注することで、社内での採用や教育の手間なくプロのスキルを活用できます。
商談につなぐまでを担当するインサイドセールスは、次の点で営業部門の中でも外注を導入しやすいという特徴があります。
- 「リードからの案件創出が足りない」「新規開拓が課題」など、課題に合わせて部分的に導入しやすい
- 即戦力のスタッフが業務に当たるため、立ち上げが早い
- メンバー選抜・育成のコストや時間を省ける
- 外注先によっては繁忙期・閑散期に合わせてスタッフ数を調整しやすい
SALES ROBOTICS株式会社の調査では、インサイドセールスの体制において内製と外注のハイブリッド型が半数というデータもあるほどです。
自社にインサイドセールスのノウハウがなくお悩みの場合は、外注も検討してみてはいかがでしょうか。
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まとめ
この記事では、インサイドセールスを新たに立ち上げる際の手順やポイントについて解説しました。
インサイドセールスでは、多くのリストに根気強くアプローチしながら顧客との関係を構築するため、チーム編成に外注を活用することがおすすめです。
インサイドセールスのノウハウを持った外注サービスを導入することで、適性や経験を持ったスタッフをすぐに活用でき、スムーズにチームを立ち上げることができます。
インサイドセールスを立ち上げて営業を強化したいと考えている企業の方は、ぜひアウトソーシングの活用も検討してみてください。
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