ペーパーレス化の進め方は?手順とポイントを徹底解説!
デジタル化社会を迎え、企業活動においても「ペーパーレス化」が進んでいます。
そんな中、
ペーパーレス化の進め方がわからない…
ペーパーレス化を進める人的リソースがない…
と悩んでいる経営者の方も多いでしょう。
そこでこの記事では、「ペーパーレス化の進め方とポイント」を解説します。ペーパーレス化に必要なツールやシステムも紹介するので、導入の参考にお役立てください。
ペーパーレス化とは
ビジネスにおいて「ペーパーレス化」とは、文書や書類・資料など紙媒体で扱っていた情報を電子化し、データとして活用・保存することを言います。
近年ペーパーレス化に取り組む企業が増えている背景には、「デジタルトランスフォーメーション(DX)」と「働き方改革」の推進が大きく影響しています。
というのも、ペーパーレス化は働き方改革とDXを推し進める重要なプロセスだからです。
たとえば、ペーパーレス化に取り組めば、オフィスで文書を作成・共有したり、印鑑(ハンコ)をもらうために出社したりする必要が無くなります。そうなれば、働く場所に縛られることが無いため、テレワークを含む多様な働き方が可能になります。
また、ペーパーレス化によってあらゆる情報をデジタルデータとして活用できるため、RPAをはじめとするさまざまなITツールとの連携が実現します。
そうなれば、これまで手作業で行っていた業務を自動化あるいはデジタル化できるため、業務プロセスやビジネスモデルの改革につなげられます。
今や働き方改革とDX化の実現は、企業に課された命題と言っても過言ではありません。ペーパーレス化は、これら2つを実現するために欠かせないひとつの「手段」として、今後も必要性が増していくことでしょう。
ペーパーレス化を進めるメリット
ペーパーレス化に取り組むと、企業はさまざまなメリットを享受できます。
業務効率化
ペーパーレス化に取り組むことで、業務の効率化や生産性の向上が期待できます。
たとえば、資料検索。紙の場合は1枚1枚資料を確認しなければいけませんが、電子化すればキーワード検索ができるため、大幅な時間短縮が可能になります。
文書作成においても同様です。紙ベースの文書作成では、誤字や脱字、記入漏れなどの人的ミスが起こりやすいうえに、ミスがあれば文書を一から作成しなおさなければいけません。
しかし、文書が電子化されていれば、誤字・脱字や必要項目を自動でチェックすることも文書の一部のみを修正することもできるため、作業負担を軽減できます。
このように、ペーパーレス化することで、書類を紙で扱うよりもはるかにスピーディーかつ正確に業務を進めることができるのです。
コスト削減
コストが大幅に削減できることも、ペーパーレス化によるメリットのひとつです。
実は、紙の書類には我々が考える以上のコストがかかっています。
書類を電子化すれば、以下のようなコストが削減できます。
- 紙・印刷代コスト
- 文書保管コスト
- 郵送コスト
- 廃棄コスト
- 人件費 など
社内の文書保管スペースについても同様です。ペーパーレス化すれば保管スペースのみならず、棚や箱、ファイルといったオフィス用品も必要なくなります。
さらに書類の印刷や廃棄、それを行う人件費も必要なくなるため、たくさんの無駄を省くことができます。
セキュリティ強化
ペーパーレス化することで、セキュリティの安全性が向上します。
誰でも閲覧可能な紙の書類とは異なり、電子化した資料はパスワードやアクセス権限の設定が可能です。
個人レベルで閲覧許可を付けられ、さらにはアクセス記録の参照もできるため、不正に対する牽制効果やセキュリティ強化につながります。
紙の書類のリスクである、火災や紛失・盗難といった心配がなくなるのも大きな利点と言えるでしょう。
とはいえ、サイバー攻撃などの可能性は否定できず、各デバイスのセキュリティ対策を万全にしておく必要はあります。
環境への配慮
ペーパーレス化に取り組むことで、環境保全に貢献できます。
紙の消費は環境破壊の一因となります。このままでは紙の原料となる森林を伐採するスピードに、植林した森林の成長が追いつかなくなります。そして、紙の生産工程や焼却時に発生する二酸化炭素は地球温暖化につながります。
日本製紙連合会のデータによると、日本は世界で3番目に紙・板紙の生産量が多く、2019年の国民1人当たりの消費量は202.7kgと世界でもトップクラスの水準。
ペーパーレス化することで環境に配慮できるうえに、SDGsによって環境意識が高まっている世間に対して、環境に優しい企業であるとアピールすることも可能でしょう。
環境配慮へのアピールができれば、企業価値や信頼感が上がり、企業のイメージアップにもつながります。
テレワークの推進
ペーパーレス化は、テレワークの促進にもつながります。
電子化の強みは、何といっても時間と場所の制限なく情報共有ができること。紙の書類をやりとりする必要がなくなり、さまざまな業務をオンラインで行うことができます。
社内の申請や稟議も、電子承認システムで実施すれば書類の捺印やサインのために出社する必要がありません。
さらに、テレワークが促進されれば場所による制限がなくなるため、採用強化も可能になります。遠方在住、または何らかの理由で自宅を空けられない有能な人材を雇用でき、採用の幅が広がるでしょう。
ペーパーレス化の進め方
ペーパーレス化の必要性やメリットを理解したところで、ペーパーレス化の進め方を見ていきましょう。以下の6つの手順でペーパーレス化を進めていきます。
1.目的を明確にする
まずは、ペーパーレス化によって何を実現したいのかという「目的」を明確にしましょう。
目的を設定せず闇雲にペーパーレス化を進めた場合、使い慣れないツールやシステムを使う必要性がわからず、結果として紙を使い続ける従業員が出る恐れがあります。
一人でも脱線してしまえば、ペーパーレス化は実現できません。
ペーパーレス化は全社の経営課題として、導入時に「なぜペーパーレス化に取り組む必要があるのか、目的はどこにあるのか」を説明し、従業員が積極的に取り組める体制を整えていくことが重要です。
2.データ化する書類を見極める
次に、ペーパーレス化する書類の対象範囲を設定しましょう。
全ての業務で一斉にペーパーレス化しようとすると、現行の業務フローが大幅に変わり、従業員だけでなく取引先にも混乱を招く恐れがあります。
はじめは目的ごとに書類の対象範囲を絞り、徐々に範囲を広げていくと良いでしょう。
たとえば、テレワーク推進が目的であれば出社の手間がかかる書類を対象とします。コスト削減が目的であれば、印刷費や倉庫の保管費用が高い書類を対象にすることで、より大きな効果を実感できます。
初めから「全ての書類をデータ化しなければ」と意気込まず、段階的に進めていくことで、結果的にスムーズなペーパーレス化が実現できます。
3.必要なツールやサービスを検討する
ペーパーレス化にあたって、ツールやシステムの導入は必要不可欠です。ペーパーレス化の目的や自社の状況に合ったツールを導入することで、自社の課題を克服しましょう。
たとえば、目的がテレワーク推進ならオンラインストレージなどクラウド型のツール、業務効率化ならOCRなどのツールが効果的です。
なお、ペーパーレス化を進めるための具体的なツールやサービスに関しては、後ほど詳しく解説します。
4.運用ルールを決める
ペーパーレス化を本格運用する前に、運用ルールを策定しましょう。
ペーパーレス化に伴ってツールやシステムを運用するとなると、現行とは違った手順で業務を進めることになります。
運用を始めてから混乱することのないよう、マニュアルやルールは事前に策定することが重要です。
5.社内に周知して実行する
マニュアルや運用ルールの策定ができたら、社内に周知して理解を得てから実行に移しましょう。
全社または部署単位での説明会や勉強会の機会を設け、不明点や疑問点をクリアにしていくのも良いでしょう。
従業員全員がペーパーレス化について理解し、新たな手順やルールのもとで意識と足並みを揃えることが重要です。
6.分析や改善を行う
実際にペーパーレス化を開始したあとは、運用内容の分析と改善を繰り返し行いましょう。
従業員からのフィードバックや評価を数値化(レポート化)すると効果を分析しやすく、かつ社内での共有もしやすくなります。
分析結果をもとに課題を明確にして改善のアクションをとっていくことで、ペーパレス化の効果を高めていくことができます。
また、ペーパーレス化で得られた効果もレポート化して共有すると、従業員の意識を高めることができ、より効果的にペーパーレス化を進めていけるでしょう。
ペーパーレス化を進めるポイント
ペーパーレス化の進め方がわかったところで、次は施策をスムーズ進めるためのポイントを4つ見ていきましょう。
目標を設定する
ペーパーレス化をスムーズ進めるためのポイント1つ目は、企業全体のテーマとしてペーパーレス化における目標を設定することです。
コスト削減目標や業務改善目標などを具体的に決めることで、社員の意識も共有できます。
例えば、目標設定には以下の項目があります。
- 文書削減目標・・・紙の文書を何%減らすか
- 検索時間目標・・・電子ファイルを探し出すまでの所要時間
- 社内のどの部門をペーパーレス化の対象にするか
- ペーパーレス化導入をどのくらいの期間で行うか
- 部門や実行プロセスごとのスケジュール設定 など
企業一丸となって目標に取り組めば、社員一人ひとりの業務効率化にもつながるでしょう。
ITリテラシーを強化する
電子化をスムーズに進めるために、社員のITリテラシーを強化しましょう。
ペーパーレス化が進まない要因の1つに、「ITリテラシーが社員によってバラバラ」という点が挙げられます。
日常的にスマホやパソコンを使用しているデジタルネイティブ世代はペーパーレス化の受け入れが比較的容易ですが、ベテラン社員ほど紙の書類に慣れてしまい、ITに不慣れな人も少なくありません。
また、デジタルネイティブ社員であっても、外出先のカフェなどにあるフリーWI-FIを不用意に使用し、他者にデータを盗まれてしまう可能性があります。
導入研修やマニュアルの整備を行い、事前にITリテラシーを強化しておくことが大切です。
部分的・段階的に進める
ペーパーレス化を部分的・段階的に行うことも重要なポイントです。
電子化はインパクトのある取り組みです。慣れている従来のやり方から新たな手段への変更を強いられるため、社員にある程度のストレスがかかります。
そのため、まずは特定の部署や特定のツールだけで導入してみることをおすすめします。
特定の部署やツールで実験的に導入し、そこで出てきた問題を改善する。そこから最終的に全社内に導入していくと、スムーズにペーパーレスへと移行できます。
リスクに備える
ペーパーレス化によって情報をデータ化することで、紙の管理とは違ったリスクが発生します。
具体的には、システム障害が起こった際に閲覧ができなくなる可能性やデータ紛失のリスク、ハッキングなどに伴う情報漏洩などのリスクが挙げられます。
そのため、セキュリティ対策の強化はもちろん、こまめにバックアップを取るなどの対策を講じてリスクに備える必要があります。
ペーパーレス化に必要なツール・サービス
ここからは、ペーパーレス化をスムーズに進めるために必要なツールやサービスを紹介します。
OCR
ペーパーレス化のためのツールとして、まず挙げられるものが「OCR」です。
OCRとは、「光学文字認識」技術のことで、紙書類などのアナログデータをデジタルデータに変換します。
通常、スキャナーやカメラで読み取った紙面は「画像データ」として保存されますが、OCRを用いることで、文字を「テキストデータ」として保存できます。
そのため、OCRによってデジタル化されたデータは文書検索できるだけでなく、データの編集が可能になります。
また、伝票などの情報を手入力でデータ化している場合は、OCRを用いることで作業スピードがアップするうえに、手入力による入力ミスも回避できます。
なお最近では、OCRとAI(人工知能)を組み合わせた「AI-OCR」も登場しています。
AIの力を用いることで、文字認識率やレイアウト解析(認識範囲の特定)の精度を向上させ、業務効率を大幅に向上できるように進化を遂げています。
【代表的なOCR/AI-OCR】
DX Suite / COMITX / eas / Googleドライブ / Microsoft OneNote / Light PDF など
文書管理システム
文書管理システムもペーパーレス化の促進に有効です。
文書管理システムは、電子化された文書の保管・保存・活用・廃棄を一元管理できるシステムです。
一般的には、スキャン機能・文書管理機能・文書検索機能・ファイル共有機能・ワークフロー機能が備わっていて、必要な文書を必要な時に取り出すことができ、共有や更新をしやすくしてくれます。
【代表的な文書管理システム】
invoiceAgent、LegalForceキャビネ、CLOUD CABINET、FileBlog など
オンラインストレージ
オンラインストレージとは、インターネット上の「ファイルの格納場所」のことです。
オンラインストレージに電子化した大量のデータを保管しておけるため、ペーパーレス化には必要不可欠なツールと言えます。
オンラインストレージはクラウドサービスのため、自社サーバーの設置に比べて導入コストを安く抑えられるというメリットがあります。
また、基本的にインターネット環境があればどこでも利用できるため、社外からの情報アクセスや共有が簡単にできる点も大きなメリットです。
【代表的なオンラインストレージ】
Google Drive、OneDrive for Business、セキュアSAMBA、Dropbox Business など
アウトソーシングサービス
ペーパーレス化を成し遂げるには、これまで紙で保管していた過去文書の電子化も必要です。しかし、それらを電子化するには膨大な時間と労力が必要です。
ペーパーレス化を進めるための人的リソースが社内にない場合には、アウトソーシングサービスに外注するのも一つの手です。
ペーパーレス化に伴うデータ化やツール選定作業などを外注することで、自社の業務に支障を来すことなくペーパーレス化を進めることができます。
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ペーパーレス化の進め方のまとめ
ペーパーレス化の進め方について詳しく見てきました。
ペーパーレス化を推進することによって、業務効率化やコスト削減が図れるだけでなく、結果として働き方改革やDXの推進にもつながり、企業価値を高めることができます。
ペーパーレス化を成功させるためのポイントは4つ。ペーパーレス化の目標を明確にすること、社員のITリテラシーを強化すること、部分的・段階的に進めること、そして、リスクに備えて対策を講じることです。
デジタル化の潮流や政府の後押しもあり、ペーパーレス化の必要性は今後も増していくことでしょう。今からでも遅くはありません。これを機に、ペーパーレス化を推進して、デジタル化社会に対応しましょう。
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