DX人材の採用・育成が握る日本企業の未来【DX人材に求める資質】
デジタル技術でビジネスを変革するデジタルトランスフォーメーション(DX)。DXが生活に浸透しつつあることを実感している人も多いことでしょう。
実際にデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進に関心をもつ企業、デジタルトランスフォーメーション(DX)化に着手し始めた企業は、新型コロナ感染症の世界的な拡大を機に増加傾向にあります。
しかし、日本企業のDX推進を阻む問題も浮上しています。日本のDX人材が不足しているというのです。
なぜDX人材が不足しているのでしょうか?DX人材とはどのような職種を指すのか?
この記事ではデジタルトランスフォーメーション(DX)の課題から、DX人材を獲得するためのヒント、日本企業のDX人材事例などを紹介します。
DXが注目されている理由
新聞やネット記事、ビジネス書などでは、デジタルトランスフォーメーション(DX)の問題が頻繁に取り上げられています。なぜ注目されるようになったのでしょうか。
それは経済産業省が2018年に公表した「DXレポート~ITシステム『25年の崖』克服とDXの本格的な展開~」通称「DXレポート」の警鐘がきっかけでした。
DXレポートにはデジタルトランスフォーメーション(DX)の重要性を示したうえで、「2025年の崖」というキーワードを用いて衝撃的な数値と今後予測されるリスクが記されていました。
DXを推進しない場合、2025年以降、日本経済は最大で年間で約12兆円の損失が生じる可能性がある
日本企業がこのままデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進しない場合、市場の変化に対応できず、世界企業に国内シェアを奪われる恐れがあるというものです。
すでに米国の巨大企業であるGAFA(Google、Apple、Facebook※、Amazon)やGAFAに追随するX(Net flix、Spotifyなど)は、すでに日本市場で大きなシェアを獲得している状況です。
さらに、市場の変化に対応できないだけでなく、システムの老朽化によるリスクについても提言しています。
欧米に比べて日本企業は、古いシステムを使っていることが多く、さらにはシステムの継ぎ足しで複雑化していたり、開発者が不在だったりすることでシステムがブラックボックス化されているケースがあるといっています。
ブラックボックス化したシステムを刷新するには多額の費用が必要となり、維持費やメンテナンス費もかさみます。さらには、データの消失などのトラブルが発生する可能性もあります。
このような状況を回避するために、日本政府はDXレポートを公表し、日本企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進を後押しし始めました。産業支援や労働生産性の向上という側面からもデジタルトランスフォーメーション(DX)を推奨しています。
※現在はMeta
日本企業のDX化推進における課題
経済産業省が「DXレポート」でDXの重要性を説き、今後予想されるリスクを警鐘したことで、いくつかの日本企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)化の推進に舵を切り、歩み始めました。
しかし、一筋縄ではいかない課題が出現しています。浮き彫りになった3つの課題について解説します。
経営者のコミットメント
デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する上で最初に突き当たる課題が経営者のスタンス問題です。
デジタルトランスフォーメーション(DX)は単なるIT化とは違います。デジタル技術を活用したビジネス変革です。書類をデータ化するのとは規模が違います。
デジタル技術を用いてビジネスモデルや業務プロセスを変革するのですから、意思決定者である経営者のコミットメントが不可欠です。
実際には、DX化が進まない企業の多くは、経営トップがデジタルトランスフォーメーション(DX)の真髄を理解せず、担当者や外注先に丸投げしているケースです。この状態では、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進速度が上がらず、競合との差が広がりますから、成功までの道のりは遠のくばかりです。
デジタルトランスフォーメーション(DX)を迅速に成功させるためには、意思決定者である経営層のマインドセットが求められています。経営層のデジタルトランスフォーメーション(DX)に関する知識を高め、コミットメントすることが重要となります。
システム外注化の慣行
日本企業のDX化推進における課題の二つ目は、システムの内製化の問題です。
世界市場の環境の変化に対応するためには、サービスの早期立ち上げが重要となります。そのカギがシステムの内製化にあります。日本企業のシステム内製化率の低さがデジタルトランスフォーメーション(DX)推進が進まない理由の一つとされています。
内製化率が低い原因の一つとなっているのが、日本企業の業務プロセスにあります。企業の多くはシステム開発をIT(ベンダー)企業に委託しているケースが多く、慣行化されてきました。
システム開発基盤の難しさから、内製化のスキルを持つこと、維持することが難しかったという側面もありました。複雑なプログラミングを必要としない「ローコード」の開発が進んだ現在においても、従来のプロセスを慣行していることが問題視されています。
システムを内製化することでDXの推進力は上がります。内製化することで、設計変更などにも迅速かつ柔軟に対応することが可能になるからです。
デジタルトランスフォーメーション(DX)化が進む欧米企業では自社で人材育成し、自社内で推進しています。内製化することは、ノウハウの蓄積にもなりますし、コスト削減にもなるというメリットもあります。
しかし、日本では依然として外注先にシステム開発を依存している状態が続いています。受託先であるIT(ベンダー)企業は自社の売上を上げるために、時間をかけて開発することもあるため、企業は既存システムの運用・保守に費用を費やすことになります。
DX人材の確保
日本企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)化推進における三つ目の課題が、DX人材不足です。デジタルトランスフォーメーション(DX)化の意義が浸透してきたところで実際に、戦略の立案や実務を行う人材が足りていないというのです。
日本企業と米国企業のDX人材を調査した「DX白書2021」では、日本企業の約76%が、企業変革を推進する人材の「量」が不足していると報告しています。ちなみに米国企業は約43%ですら、その差は明らかです。
参考:経済産業省「DX白書2021_第3部_デジタル時代の人材」
他の調査では、日本のDX人材不足は今後さらに拡大することも予測されています。DX人材を確保・人材育成ができない状態では、システムの内製化を実現することもできませんから、DXの推進力を上げることも難しくなります。
この課題を克服するために、早急なDX人材の採用、人材育成が必要となります。
DX人材とは
DX人材不足を解決するためには、まずDX人材とはどのような職種を指すのか見てみましょう。デジタルトランスフォーメーション(DX)化の推進に必要な人材について解説します。
DX職種に必要なスキルと資質
デジタルトランスフォーメーション(DX)化を推進するために必要な人材といえば、システムエンジニアを思い浮かべる人は多いことでしょう。しかし、それだけではありません。
これまで採用や人材育成の経験がない職種がある場合は、職務内容を理解することも必要となります。デジタル事業に対応するDX人材の職務内容や資質について解説します。
参考:経済産業省「DX白書2021_第3部_デジタル時代の人材」
プロダクトマネージャー
プロダクトマネージャーはデジタルトランスフォーメーション(DX)を実現させるリーダーです。経営とシステム領域の両方の理解が必要となります。経営方針や企業戦略をもとに自社の製品、商品、サービスを成長させるIT戦略を実現させる役割を担います。
プロダクトマネージャーにはビジネスを変革していく戦略的思考や周りを巻き込んで実行する推進力も求められます。また、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するためには、組織を横断したチームの構築が必要となります。それぞれの部署の特性や文化を理解し、まとめあげなくてはなりませんからマネジメント能力や高いコミュニケーション能力も重要となります。
システム開発の仕様書や設計書のスキルや判断能力も重要となるためエンジニアの経験も求められます。
ビジネスデザイナー
ビジネスデザイナーは、IT戦略の企画立案や推進を担当します。自社製品やサービスをビジネスとして成立させるための仕組みを構築し、ビジネスを成功に導く役割を担います。
事業を構築していくスキルだけでなく、課題の抽出やロジカルシンキングをベースとしたクリエイティブディレクションの経験なども求められます。この他にも求められるスキルとしてビジネスコーチングなどがあります。
テックリード
テックリードは、システム設計から実装までを行う職種です。デジタルスキルの他にもエンジニアチームをまとめあげるマネージメント能力やコミュニケーション能力が求められます。
データサイエンティスト
データサイエンティストは、データの解析や分析を行う職種です。収集したデータをもとにビジネス課題の抽出やイノベーションを促進させる役割を担います。
コンピューター・サイエンス、データ分析能力の他に、ビジネスや市場トレンドなどの知見も必要となります。
先端技術エンジニア
先端技術エンジニアとは先進的なデジタルスキルを担う職種です。
最先端技術であるAI(人工知能)の開発や実装、AI(人工知能)が学習したデータの解析等をおこないます。専門性が高いプログラミングとデータ解析の能力が必要となります。
UI/UXデザイナー
UIデザイナーとはユーザーインターフェース(User Interface)デザイナー、UXデザイナーとはユーザーエクスペリエンス(User Experience)デザイナーの略です。エビデンスに基づいたデザイン設計、制作の役割を担います。マーケティングの能力やプロダクトの理解、市場理解なども求められます。
<h4>エンジニア/プログラマー</h4>
エンジニア/プログラマー
システムの実装やインフラ構築・保守・運用・セキュリティーなどを行う職種です。実務を実行する役割を担います。
各現場で実感している課題にこそイノベーションを起こすヒントが眠っている!と現場の課題感を大事にしている企業の場合、これらのDX人材と既存部署とで横断チームを編成し、DXを推進します。
DX人材が不足している業種
DX人材の職種が分かったところで、日本市場ではどんな職種がどれくらい不足しているのかを見ていきましょう。デジタル事業に対応する人材の「量」の確保について職種別に調査した結果です。「プロダクトマネージャー」「ビジネスデザイナー」「データサイエンティスト」の割合が高くなっています。
1位 プロダクトマネージャー 57.1%
2位 ビジネスデザイナー 56.5%
3位 データサイエンティスト 55.5%
参考:経済産業省「DX白書2021_第3部_デジタル時代の人材」
エンジニアやプログラマーといった技術職よりも、プロダクトマネージャーやビジネスデザイナーといった事業企画を立案する人材が不足していることがわかります。
日本企業のDXを担うIT人材の問題
「DX白書2021_第3部_デジタル時代の人材」によれば、日本のIT人材の推計は約135万人存在するとされています。
情報処理推進機構の調査から、日本以外の国ではIT企業以外の企業にIT人材は約5割が所属しているのに対し、日本では約7割強がIT(ベンダー)企業に所属していることがわかっています。
このことから、日本のIT人材の所属に偏りがあることがわかります。あらゆる業種でIT人材が求められているにもかかわらず、雇用の流動性が低いため、大きな動きは見られない状況です。
IT人材の偏りに課題を感じ、この辺りを是正しようと政府も動き始めています。しかし一筋縄ではいかない問題もあります。
既存産業の業界構造は、ユーザー企業は委託による「コストの削減」を、ベンダー企業は受託による「低リスク・長期安定ビジネスの享受」というWin-Winの関係にも見える。
しかし、両者はデジタル時代において必要な能力を獲得できず、デジタル競争を勝ち抜いていくことが困難な「低位安定」の関係に固定されてしまっている。 引用:経済産業省「D X レポート 2.1(DXレポート2追補版)」
IT(ベンダー)企業の中には、人材を企業に派遣することでビジネスを成り立たせているところもあります。企業のデジタル内製化を支援すると、IT(ベンダー)企業は不要になってしまいます。このことはIT(ベンダー)企業にとっては、死活問題に繋がります。
このままでは日本企業はデジタル技術のノウハウを獲得・蓄積することができず、自社でのシステム内製化どころか、人材を採用することも育成することも難しくなります。
IT人材は米国では約400万人、中国は約230万人。すでに大きく差が開いています。DX人材不足を解消するためにも、早急なIT人材育成が求められています。
参考:経済産業省「第2回 デジタル時代の人材政策に関する検討会:デジタル人材に関する論点」
DX人材を獲得するために
DX人材を獲得するためにどんなことをすべきなのでしょうか?
雇用形態の見直し
専門性の高いデジタルトランスフォーメーション(DX)人材を採用するために、雇用形態から見直すケースも見受けられます。
どういうことかというと、これまで日本では一般的だった終身雇用制度の「メンバーシップ型」から、職種内容を明確に規定して採用する「ジョブ型」へ移行する動きが広がっています。
欧米企業に普及しているジョブ型雇用の場合、獲得スキルや仕事内容で賃金は決まります。専門性が高い分野や人材が不足している職種の場合、賃金は高く設定する必要があります。しかし職務内容を明確にしたうえで、その条件に合う人を募集するため、条件に合う人材を獲得しやすいことや、育成の必要がなく即戦力になるというメリットがあります。
ジョブ型雇用では、メンバーシップ型の雇用で重視されていた学歴や職歴で人材を評価するのではなく、スキルで人材を評価する傾向が強まります。
既存社員のリスキング
中途採用に加えて、デジタルトランスフォーメーション(DX)を担う人材を社内で育てるリスキング(学び直し)に取り組む企業もあります。
DXプロジェクトに加わる既存社員をDX人材に育てる「攻めのリスキング」です。DX人材を育てて生産性向上を目指します。
社内研修やオンライン教育サービス、ツールを利用し、必要なスキルを学習。中には週休3日制を導入し、学習日を確保する企業もあります。
しかし、ここにも課題はあります。リスキングを継続させるマインドセットの問題です。効果を上げ持続するための取り組みは、今後の研究に期待されています。
ビジネス変化のスピードが上がる中、DX人材を獲得するための戦いは、ますます熱を帯びてくることが予想されます。
DX人材確保と人材育成事例【日本企業】
デジタルトランスフォーメーション(DX)人材を育成し始めた企業や、システム内製化の動きを始めた日本企業の事例を紹介します。
小林製薬
医薬品と衛生雑貨の製造販売を行う小林製薬では、2022年にシステム開発の人員を倍増させ、自社でシステム開発を始めました。協力会社に任せていたシステムの開発や改善を内製化することも定めています。
すでにポルトガルのIT企業であるOut Systemsの開発ツールを採用し、アプリ開発の内製化も始めています。これまで手作業で数時間から1日費やしていた作業が約1時間に短縮。自社商品の販売データを営業担当者が確認できるようになりました。
日本郵船株式会社
大手の海運会社である日本郵船はDXの人材育成に力を入れています。
DX人材育成を「Project Mt. Fuji」と称した富士山型の人材育成の仕組みを作り上げています。DXリーダーを育成するプログラム「デジタルアカデミー」や、データサイエンティストを育成する「データラボラトリー」なども独自で開発し展開しています。
また、DX推進は全社員の行動変容や企業文化の変革と位置づけ、社内報やイベント、メールマガジンなどで情報発信も行っています。
日清食品ホールディングス
食品加工会社である日清食品を中心とした食品グループ、日清ホールディングスは、全社DX活動「NBX:NISSIN Business Transformation」に取り組んでいます。
プログラミングの専門知識がいらないローコードツールを導入し、業務アプリを内製化し、ペーパーレス化を行いました。これまで平均20営業日かかっていた稟議から承認までが、平均4日に短縮。グループ全体で10万枚以上の紙を削減。効率化・生産性向上に成功しています。
デジタルトランスフォーメーション(DX)の本質であるビジネスモデル変革にも取り組み始めています。iPaaS(Integration Platform as a Service)を採用し、データの連携や集約、分析する基盤を構築。ビジネスモデルの刷新を目指しています。
参考:日清食品HD 成田敏博が語る全社DX活動のマイルストーン
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まとめ
デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進力を上げる必要性と共にDX人材不足の課題について解説しました。世界的なパンデミックの影響を受けて、日本企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)化のスピードは加速し始めました。
とはいえ、すでに世界企業との競争に劣後している日本企業。今後さらなるデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進が求められています。
日本企業の未来に繋がる重要な課題を克服するためにも、早期のDX人材採用、人材育成がカギとなりそうです。
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