東南アジア進出のメリット・デメリットは?ASEAN各国の特徴をまとめてご紹介

生産拠点としてだけでなく、消費市場としてもますます魅力が高まる東南アジア。実際に東南アジア進出をはかる日本企業は年々増加しています。

しかし、同じ東南アジアといっても、国民性や経済状況、文化や法制度などは各国で大きく異なります。
やみくもに進出してもリスクだらけということは、皆さまも十分ご承知されているのではないでしょうか。

そこで今回は、ASEAN各国ごとの主な特徴と、進出する際のメリット・デメリットをまとめてご紹介します。

さらに、自社に適した国を見極める際の注意点を確認しながら、文末では海外進出のカギを握る、進出サポートサービスもご紹介します。ぜひ最後までお付き合いください。

日本企業の東南アジア進出事情

東南アジア進出1

日本企業の海外進出において、ASEANへの進出割合は9年連続で増加しています。

財務省の調査によれば、ASEANに対する日本企業の直接投資額は、2010年時点で7兆3,970億円。それが2020年時点では、28兆6,341億円に増加しています。
その伸び率は287%。同期間の全世界に対する直接投資額の伸び率(204%)よりも高い数値となっています。

東南アジアに進出している日本企業

それでは具体的に、どれほどの企業が東南アジア進出を果たしているのでしょうか。ASEAN各国ごとに、日本企業の拠点数をまとめました。

上位5カ国にランクインしたのは、タイ、ベトナム、インドネシア、フィリピン、マレーシアです。この5カ国は、2010年時点の調査でもトップ5にランクインしています。

2010年時点からの伸び率で比較すると、タイ(327%)、ベトナム(116%)、インドネシア(53%)、フィリピン(32%)、マレーシア(4%)と、タイとベトナムの伸び率が際立っています。ASEANの中でも、この2カ国が特に注目を浴びてきたことがわかるでしょう。

参考:日本銀行「直接投資・証券投資等残高地域別統計、2010年末
財務省「直接投資・証券投資等残高(地域別)、令和3年5月25日

日本企業が東南アジアに進出する理由

東南アジア進出2

東南アジア進出において、日本企業はどんな点にメリットを感じているのでしょうか。主な3つの理由をご紹介します。

経済成長と市場の発展

従来の東南アジア進出においては、安価な労働力を求めた生産拠点としての進出が一般的でした。しかし現在では、経済成長により発展した消費市場を目的としたものに変化してきています。

三菱総合研究所の調査によれば、ASEANの人口とGDPは増加し続け、2030年にかけて堅調な成長が続く見込みです。

ASEANの人口は、世界人口の8.6%にあたる6億6713万人(2020年時点)。この数値は日本の人口1億2,583万人の5.3倍となっています。
ASEANの人口は今後も増加を続け、2030 年までには7億3000万人に達する見込みです。労働力人口も3億3000万人に達すると推計されています。

また、ASEANの実質GDP成長率は、2001年~2019年にかけて平均5%程度を維持していました。それに対し日本は0.1%~3%の間をさまよっています。ASEANの潜在成長率は、今後も4%程度を維持する見込みです。

参考:三菱総合研究所「(3) ASEAN 経済: 「中進国の罠」の回避へ

外資規制の緩和

これまでASEAN各国では、海外企業の誘致を進める一方で、自国産業保護のために厳しい外資規制を設ける国が多く存在していました。

それが2021年に入り、各国が相次いで外資規制の緩和に乗り出しています。その狙いは、米中対立により中国から東南アジアへと生産拠点を移すグローバル企業の受け皿となるためです。

例えばマレーシアでは、2021年4月から、企業が得た輸出代金が全額両替不要となりました。それまでは、輸出代金の75%以上を自国通貨に両替するよう義務付けられていました。

また、インドネシアでは分散していた許認可などの窓口をオンラインに一本化。硬直化した雇用制度が見直され、外資がビジネスしやすい環境の整備が進められています。

こうした外資規制の緩和により、ますます東南アジア進出の機運が高まっているのです。

日本ブランドへの信頼感と憧れ

従来からASEANでは、自動車や家電といった日本製品のシェアが高くなっています。その性能は高く評価され、日本ブランドへの信頼感と憧れにつながっています。

実際にマレーシアでは、日本から優れた部分を学ぼうとする「東方政策(ルックイースト・ポリシー)」も展開されています。

さらに近年の経済成長により「質より量」の段階から「量より質」の段階へと転換期を迎えています。昔より今のほうが、ジャパンクオリティが受け入れられる土壌が整ってきているといえるかもしれません。

国別にみる東南アジア進出のメリット・デメリット

東南アジア進出3

同じ東南アジアでも、各国で大きな違いが見られます。ASEANの中でも主要6カ国の特徴をご紹介します。

タイ進出

タイは、日本企業の拠点数と直接投資額がASEANの中で最も多い国です。生産拠点としても消費市場としても魅力があります。

タイはASEANの中心部に位置しており、周辺国に効率よく輸出が可能となることが生産拠点としての魅力につながっています。物流インフラも比較的整っています。

昔から自動車産業の集積が進み、ホンダやマツダなど自動車メーカーの多くが生産拠点を置いています。他にも三菱電機やコニカミノルタといった数多くの精密機械メーカーも進出しています。

近年では、サービス業の割合も上昇。2020年には、非製造業の進出数が製造業を上回りました。首都バンコクの中心部では、大規模ショッピングモールの建設も相次いでいます。

タイの名目GDPは5,436 億ドル(2019年時点)。ASEANの中でもインドネシアに次ぐ第2位となっています。中でも個人消費が伸長し、一人あたりのGDPは2009年から10年間で約3倍に増加しています。

年間可処分所得が1万5,000ドルを超える富裕層・上位中間層の割合も増加。2009年時点では全体の2割弱でしたが、10年間で5割弱にまで増加しています。

政府が打ち出す誘致施策も魅力的です。外資100%もしくは過半数の出資で進出が可能な他、法人税や輸入税の免除など、税制面でもさまざまな恩恵を受けることができます。今後も不動産購入を容易にする規制緩和などが計画されています。

また「タイランド4.0」政策では、デジタル技術を有する外国企業の誘致が進められ「デジタルパーク・タイランド」と呼ばれるビジネス施設の建設も予定されています。さらに、バンコク東部3県が投資地域に指定され、集中的にインフラ整備も行われる計画です。

リスクとしては、高齢化社会に移行しつつあります。生産年齢人口も近い将来、減少に転じるといわれています。
時々クーデターが発生し、政治・社会情勢が不安定な点も懸念材料です。大洪水などの自然災害が多い点もリスクとして挙げられるでしょう。

シンガポール進出

シンガポールは、世界銀行のビジネス環境ランキングで1位の常連です。インフラが高度に整備されており、ビジネスがしやすい国だといわれています。

サービス産業の割合が8割弱と高く、その割合はASEANの中でも最大です。特に先端産業の誘致に力を入れています。

法人税率が17%と低く、政府の認定を受けることができれば、各種軽減税率が適用されるのもメリットです。(ただし、世界各国の最低法人税率を15%以上とするG7の合意を受け、影響が出る可能性あり)

ASEANの中でも「イノベーション大国」といわれ、ASEANの首都的な存在。日本企業を含む多くのグローバル企業が、アジアの統括拠点をシンガポールに置いています。外資100%での進出も可能です。

一人当たりのGDPはASEANの中でも最大の6万5,234ドル(2019年時点)。その数値は日本の約4万ドルを上回り、世界の中でも高水準です。そのためシンガポールに進出する企業は、富裕層向けの生産拠点・消費市場としてのメリットを感じています。

一方で、シンガポールは国土面積が東京23区を少し上回る程度で、人口も500万人程度と小国にあたります。一人当たりのGDPはASEAN内で最大ではあるものの、総額では4番目の規模に留まります。

そうした国土の狭さは、事業所スペースの不足や物件の高騰といったリスクにつながっています。物価も高く、生活コストはニューヨークレベルの高水準です。そのため投資コストは高くなる傾向があります。

インドネシア進出

インドネシアの人口は2億6,700万人とASEANの中では最大です。その規模は世界的に見ても、中国、インド、アメリカに次ぐ4番目の水準です。しかも若年人口の比率が高く、人口増は2044年まで続くとされています。

また、インドネシアはASEANの中でも天然資源が豊富な国です。そのため第二次産業の比率がGDPの大半を占めていますが、第三次産業も徐々に増加しています。農産物の生産も多いため、一次産業から三次産業まで、さまざまな分野にチャンスがあるといえるでしょう。

日本企業では、京セラや資生堂など、さまざまな業種の企業が進出しています。

インドネシアの名目GDPは、ASEAN内で最大の1兆1,201億ドル(2019年時点)。その規模は、2番手のタイの2倍以上の水準で、世界全体でも16番目に位置しています。

一方、一人当たりのGDPは4,197ドルと、ASEAN内では5番目の水準です。それは日本の1970年代の水準にあたります。

富裕層・上位中間層の割合も3割強と、タイを下回っています。そのため、インドネシアでは高級品よりも低価格で機能的な製品・サービスのほうが適しているといえるでしょう。

海外企業の誘致施策としては、複雑な許認可の窓口をオンライン上に一本化。硬直化した雇用制度の見直しも進められ、ビジネスがしやすい環境整備が進められています。しかし、自動車や電子機器などの特定の裾野産業の誘致には積極的ですが、誘致対象外の産業においては規制が厳しい状況です。

また、外資企業の子会社設立にあたり、最低投資額が約7,000万円(物件投資を除く)、払込資本金が約2,000万円と定められているため、中小企業やスタートアップにとっては参入障壁が高くなっています。

人件費の高騰や、税務手続きの煩雑さもリスクとして挙げられるでしょう。重要な制度変更も不透明で頻繁に行われます。

さらに、インドネシアは1万以上もの島の集合体であるため、島ごとにマーケティング活動が必要です。渋滞事情も深刻で、物流に大きな懸念があります。

マレーシア進出

マレーシアの一人当たりのGDPは11,193ドル(2019年時点)。それはタイの約1.5倍の数値です。ASEANの中でも富裕層・上位中間層の割合が高く、比較的裕福な国です。首都クアラルンプールを中心に、ショッピングモールなどの建設も相次いでいます。

ただし、地域格差が大きく、マレー半島の東側やタイとの国境に近い北部などは低所得世帯が多くなっています。

人口は約3,000万人ですが、複数民族国家で公用語や宗教が多岐にわたります。そのためマーケティングの細分化が必要とされます。

マレーシアに進出する日本企業は、製造業が中心です。中でも、化学・医薬品分野や電気機械器具分野での進出が目立っています。国教がイスラム教であるため、飲食業の進出は特に注意が必要です。

製造、流通、サービス業においては、一部の場合を除き100%外資での会社設立が認められています。2021年4月からは外為規制が緩和され、外資企業が輸出で得た外貨を全額そのまま保有することも可能となりました。

リスクとしては、人件費の上昇や、マレー人優遇政策、高齢化社会への突入などが挙げられるでしょう。

フィリピン進出

フィリピンはASEANの中でもインドネシアに次ぐ、1億729万人の人口を有しています。現地の労働力が活用しやすく、しかも大量に確保できる点が魅力です。

名目GDPは3,768億ドル(2019年時点)。ASEANの中でもインドネシアとタイに次ぐ、第3位の経済規模となっています。

産業構成はサービス業の比率が67.7%です。島国で国土が限られるため、ある程度の施設面積が必要な製造業にはあまり適していません。

外資の誘致施策としては、BPO拠点としての誘致が進められています。輸出型企業は外資規制の対象にはなりません。

リスクとしては、インフラの未整備が挙げられます。フィリピンの渋滞事情は深刻で、貨物の取り扱いの多いマニラ港の混雑は、従来から問題視されています。

ベトナム進出

ベトナム人は、日本人との共通点が多い国民性が特徴的です。儒教の教えにより、勤勉でチームワークを大切にするといわれています。手先が器用な人が多く、繊維産業が盛ん。最近ではIT産業の成長も進み、優秀なIT人材を確保することも可能です。

富裕層・上位中間層世帯の割合は2割弱と、ASEAN諸国の中では高いほうではありません。人件費や物価が安く、米中貿易摩擦における中国からの生産拠点の移転先として注目されています。

人口は約9,000万人。人口増は2041年まで続くと予測されており、生産拠点としても消費市場としてもメリットが期待できます。

製造業の産業構成比は17.8%。ASEANの中では高い数値ではありませんが、着実に上昇しています。ベトナムにおいては、製造業が今後の経済の牽引役として期待されています。

食文化も多様で魅力的。主要都市には日本料理を含む外国料理のレストランが集まっています。進出している日本企業としては、パナソニック、ヤマハ、イオンなどが挙げられます。

リスクとしては、インフラの未整備、不透明で未整備な法制度、煩雑な行政手続きなどが挙げられます。南北に長い地理的特徴があり、北部と南部の都市では、文化や国民性などにも若干の違いが見られます。北部と南部は別の市場と捉える必要があるでしょう。

東南アジア進出時の注意点

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この章では、東南アジア進出時に、特に注意したい3つの観点をご紹介します。

日本の常識で考えない

日本の常識は、ASEAN諸国では通用しません。

例えば、東南アジアの不動産業界では、雨漏りするマンションが珍しくないといいます。停電も頻繁に起きるため、日本では最高価格が付く最上階よりも、階段で上れる範囲の中層階のほうが高価格になる傾向が見られます。

チャットコマースが浸透しているのも特徴的です。例えば、タイのFacebookユーザーは人口の7割に達しており、コメント欄やチャットで消費者から大量に質問が届くといいます。それに対応するため、現地でアルバイトを雇い、24時間体制で対応にあたる日本企業も存在します。

このようにASEAN諸国の価値観や商習慣は、日本と大きく異なる点を踏まえてビジネスを展開する必要があるでしょう。

生産拠点と消費市場の違いを意識する

生産拠点として進出するのか、消費市場を目的に進出するのかで、注意すべき観点が変わります。

生産拠点として進出する場合は、労働力の確保のしやすさ、労務問題、生産コストなどに注意が必要です。

一方、消費市場を目的とする場合は、市場規模の目安となる人口や所得、マーケティングに重要な民族構成や年齢構成を考慮する必要があります。

どちらでの進出を目的とするかによって、重点的にリサーチすべき要件定義が異なってくるでしょう。

各国の現状をきちんと把握する

同じ東南アジアでも、経済状況、文化、政策は各国さまざまです。

  • 製造業が多く、個人消費も拡大し、生産拠点としても消費市場としても進出しやすいタイ
  • 富裕層が多いものの人口や面積としては小国で、最先端産業が集積するシンガポール
  • 人口がASEAN最大であるものの、低所得者層が多く、天然資源が豊富なインドネシア
  • 比較的裕福な世帯が多く、多民族で構成されたマレーシア
  • サービス業が主力産業で、大量に労働力を確保できるフィリピン
  • 日本人と似た国民性を持ち、手先が器用な人が多いベトナム

こうした各国の状況をきちんと把握した上で、自社のビジネスに適した国であるかどうかを見極めることが大切です。

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まとめ

東南アジア進出6

東南アジア進出における、ASEAN各国の特徴と、メリットデメリットをご紹介しました。同じASEANでも、各国の状況はさまざまであることが、おわかりいただけたかと思います。

より詳細な情報を把握するためには、現地のマーケットに詳しいパートナーの存在は不可欠です。実際に多くの企業が現地に精通したパートナーとアライアンスを組みながら、東南アジア進出を図っています。

まずは、アウトソーシングなどのサポートなどを活用することで、スモールステップでリスクを回避しながら東南アジア進出を検討していきましょう。

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