テレワーク時代における人事の課題とやるべきこと【前編】

テレワーク時代におけるタイトル

近年、働き方改革や新型コロナウイルス感染拡大防止策として、「テレワーク」の導入が進んでいます。
しかし、テレワークの導入にあたっては、さまざまな課題が山積みになっているのが現状です。

特に、人事やマネジメントといった制度面でミスマッチを感じたり、従来のやり方のまま働くことに不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
テレワークで仕事を続けていくためには、抜本から意識を変え、現状に合った評価制度へとシフトチェンジすることが求められています。

そこで今回の記事では、「テレワークにおける人事の課題とやるべきこと」を2回にわたってご紹介します。
前半では、テレワーク下で発生する人事の課題と対策について、さまざまなデータや他社の事例を基に解説していきます。

テレワークが必要な背景


 
まずは、現在テレワークの普及が求められている背景から見ていきましょう。

背景1.働き方改革

テレワークは、政府が提唱する「働き方改革」においても重要視されています。
働き方改革とは、働く人々が個々の事情に合わせ、多様かつ柔軟な働き方を自ら選択できるようにするための改革です。

少子高齢化の促進によって減少する労働人口の緩和やワーク・ライフ・バランスのためにも、このような働き方の実現は、大企業だけでなく中小企業を含め、社会全体の重大な経営課題と言えます。

また、日本の労働生産性は84,027ドル、OECD加盟36ヵ国中21位とかなり低い水準であることも明らかになっています。
こうした現状を打開するためには、社会・企業・就業者の三者が手を取り合い、生産性を高めていくことが必要不可欠です。

国際的にみた日本の一人あたり労働生産性

 
テレワークという働き方には、働く場所や時間を自由に選択できるという側面があり、社会・企業・就業者の3方向にさまざまな効果をもたらすと考えられます。

具体的には、次のような効果が挙げられます。

■社会
・労働人口の確保
・地域活性化
・環境負荷の軽減

■企業
・生産性の向上
・優秀な人材の確保・離職防止
・コストの削減
・事業継続性の確保

■就業者
・多様で柔軟な働き方の確保
・仕事と育児・介護・治療との両立
・通勤時間の削減

このように、テレワークは「ワーク・ライフ・バランスの実現」「人口減少時代における労働人口の確保」「地域の活性化に寄与する」といった点で、働き方改革の切り札になる働き方として注目を集めています。

背景2.新型コロナウイルスの影響

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受け、従来の働き方を見直す動きが広がっています。

特に日本では感染対策の一貫として、「三密(密閉・密集・密接)の回避」「ソーシャルディスタンスを保つこと」などが掲げられています。
これらを遵守すべく、出勤時の人混みやオフィス空間で大勢の人間が集まることを避けるため、テレワークの利用が呼びかけられました。

通勤ができない際もテレワークであれば業務を継続して行うことができるため、その重要性があらためて認識されています。

テレワークにより、人事制度の見直しが必要に


 
働き方改革や新型コロナウイルスの影響で新しい働き方が模索される中、テレワークに注目が集まっていることがわかりました。

しかし、テレワークの導入にはさまざまな課題があることも事実です。
特に社員の働き方に直接携わる「人事」においては、多くの課題が浮き彫りになっています。

ある調査では、組織の最重要課題として「人事制度の改定」を挙げている人が多いことがわかりました。
その中には「従来の制度が実情と合わなくなってきた」という声や、コロナ禍での新たな評価体制を求める声などもあり、逼迫した状況がうかがえます。

ここからは、テレワークを導入する中で改善すべき人事制度について、詳しく説明していきます。

人事の課題1.労務管理

テレワーク導入の課題としてよく挙げられるのが、「仕事と仕事以外の切り分けが難しい」「長時間労働になりやすい」といった意見です。
遠隔で業務を進めるからこそ、労務管理が難しいと感じる方も多いのではないでしょうか。

このような状況を改善するために、労務管理については以下のポイントに気をつけるといいでしょう。

労働時間制度

テレワークを行う場合、従業員の労働時間を正確に把握することが必要です。まずは労働時間の記録方法を定めましょう。
パソコンの使用時間を記録する客観的な方法や、自己申告制によって把握する方法などがあります。

厚労省が発表している「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」などを参考に、自社に合った適切な方法を探してみてください。

また、テレワークで生じやすいのが中抜け時間や移動時間中の業務です。このようなケースにおける休憩時間・労働時間の判断基準も柔軟に定めるといいでしょう。

他にも、時間外労働・休日労働の時間管理についても基準を設ける必要があります。
業務に従事した時間を記録し、労働状況の適切な把握に努めましょう。必要に応じて労働時間や業務内容の見直しを行うことも大切です。

長時間労働対策

労働時間を把握するだけでなく、長時間労働の対策も非常に重要です。従業員の心身の健康を維持するため、次のような方法で長時間労働を防ぐようにしましょう。

■メール送付の抑制
テレワークにおける長時間労働の原因として、休日や深夜などの業務時間外に、業務に関わる指示や報告がメール送付されることが挙げられます。
そのため、休日や深夜などの業務時間外のメール送付の自粛をアナウンスすると有効です。

■システムへのアクセス制限
テレワークでは、企業の社内システムに外部のパソコンなどからアクセスすることがあります。
このとき、休日や深夜などの業務時間外はアクセスできないように制限することで、長時間労働を防ぐことが可能です。

■テレワークを行う際の時間外労働の原則禁止
業務効率化やワーク・ライフ・バランスの実現という観点から、休日や深夜の労働を制限することも有効です。社内でテレワークの趣旨をあらためて確認し、就業規則の見直しを行うといいでしょう。

■長時間労働等を行う従業員への注意喚起
長時間労働とみなされる従業員に対して、時には注意喚起を直接行うことも必要です。
労務管理システムなどで労働時間の記録を行い、場合によっては対象者に警告を表示するなどの方法をとるといいでしょう。

ここまで、テレワーク導入にあたって考えられる労働管理の課題とその解決策についてご紹介しました。
しかし、ここで最も重要なのは、労使間の双方で認識に齟齬がないよう十分に協議を重ねることです。

・テレワーク導入の目的
・テレワーク対象となる従業員・業務内容の範囲
・テレワークの方法

などを今一度確認し、労使間双方が納得のいく方法を選択しましょう。

また、実際にテレワークを行うかどうかは本人の意思によるという前提で制度設計を進めることが大切です。

参考:
テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン

人事の課題2.コミュニケーション

テレワークによって対面する機会が減り、特に変化するのがコミュニケーション面です。

テレワーク経験者917名に行ったアンケートによると、テレワーク環境下では「さびしさや疎外感を感じる気持ち」が増えたと感じる人や、「感謝の言葉や互いを気にかけ合う機会」が減ったと感じる人が多いことが明らかになりました。

お互いが別々の場所で業務を進めるからこそ、チームワークは必要不可欠。そして、チームワークを高めるためには組織に対する個々の意識を統一することも重要です。
従業員のエンゲージメントを高めるため、テレワーク時代の人事には「何でも話せる環境づくり」が求められます。

コミュニケーションの機会が減ることで、以下に挙げるマネジメントや評価に影響が出る可能性も考えられます。

人事の課題3.マネジメント

こうした労務管理の難しさやコミュニケーション不足などの問題から、多くの管理職がテレワーク下でのマネジメントに不安を抱いているのではないでしょうか?

テレワーク経験者・未経験者を対象とした調査によると、テレワーク下のマネジメントに関して以下のような結果が出ています。

テレワーク下のマネジメントの「不安」(管理職)

テレワーク下のマネジメントの「機会」(管理職)

 
特に「部下がサボっていないか心配である」という不安感は、テレワーク経験者と未経験者の数値がほとんど変わりません。
こうした不安は未経験ゆえの懸念ではなく、テレワークを経験してもなかなか拭うのが難しいことが分かります。

管理職個人の問題として軽視せず、組織全体でテレワーク下のマネジメントを考え、新たな体制を設計・構築していく必要があるのではないでしょうか。

人事の課題4.評価制度

テレワーク下における評価制度は、見直しがもっとも必要な項目といっても過言ではありません。

ここで、テレワーク経験のある一般社員とその管理職を対象とした「テレワークと人事評価に関する調査」の結果を見てみましょう。
部下の人事評価について「オフィス出社時と比べて難しい」という回答が73.7%となっており、7割以上の方がテレワーク時の人事評価の難しさを実感していることがわかりました。


 
その一方で、社員側も「テレワーク時の仕事ぶりを評価してもらえるか」について不安を感じている人が多いようです。
特に20代は6割もの方が不安を感じたと回答しており、一人で仕事をうまく進められなかったり、成果のアピールの仕方がわからなかったりしていることがうかがえます。

このような状況を踏まえ、今後はテレワークを視野に入れた人事評価制度を構築することが求められています。
では、テレワークに適した人事評価制度にはどのようなものがあるのでしょうか?

あるアンケートでは、どのような人事評価制度がテレワークに適しているかという質問に対して「成果(数値結果)をもとにした評価制度」が77.0%という結果が出ており、成果型の評価体制が必要だと考えている人が多いことがわかりました。

実際に、日本屈指の大企業であるトヨタも昇給を完全成果型に切り替えることを発表しています。
人事評価制度次第では昇給がゼロになる可能性もある新方式へと一本化し、2021年度からの運用を目指しているようです。

新型コロナウイルスの影響を受けてテレワークなどの新しい働き方が浸透していく中、このような実力重視の人事評価を設ける動きは、他企業にも広がりを見せていくのではないでしょうか。

参考:
温かく明快なコミュニケーションで、誰も孤立させないテレワークを – リクルートマネジメントソリューションズ

~テレワークと人事評価に関する調査~ – あしたのチーム

~withコロナの働き方と人事評価に関する調査~ – あしたのチーム

テレワークでの人事評価制度の事例


 
では、実際にテレワーク導入企業がどのような人事評価制度を取り入れているのかをご紹介します。

人事評価制度の事例1.カルビー株式会社

スナック菓子メーカーのカルビー株式会社では、2009年におこなった経営刷新の際、人事評価制度をプロセス主義から成果主義へと変更しました。
会社勤務と在宅勤務、どちらの従業員も同じ成果に基づいた評価を行っています。

営業部門では、売上と利益の計画達成のみで評価を実施。間接部門もなるべくデジタルな目標を立て、その達成率に応じてインセンティブを支払う形を取っています。

一般従業員は人事考課がなく、基本給は一定の年齢までは定期昇給、それを超えると業績評価による賞与で年収を稼ぐという仕組みになっています。
課長以上の管理職は年俸制で、年に一度成果に応じてインセンティブが支払われ、結果が出なければインセンティブが0円という可能性もあるようです。

人事評価制度の事例2.向洋電機土木株式会社(建設業)

向洋電機土木株式会社では、従業員からの申請内容と成果物を照らし合わせた生産性評価を行っています。

例えば、図面・工程表・質疑応答表・議事録などの成果物と作成時間、そして完成度を委員会で検討し、従業員に対する評価を定めているようです。
評価の結果は本人に通知し、自由裁量権の拡大・昇進昇給などの人事評価にも利用しています。

人事評価制度の事例3.有限会社ユー・プランニング(サービス業)

有限会社ユー・プランニングでは、毎年社長との面談で当該年度の成果を確認し、翌年度の仕事のやり方を検討する方法を導入しています。

従業員一人一人のライフステージが異なることから、公平性を担保した上で翌年度の雇用形態や雇用条件などを定め、同時にクライアントとの契約も同時期に見直しているそうです。

参考:
平成26年度テレワークモデル実証事業 テレワーク活用の好事例集

平成27年度テレワークモデル実証事業 テレワーク活用の好事例集

テレワーク時代における「人事のやるべきこと」とは?

今回の記事では、テレワークが今なぜ注目されているのかという社会背景と、導入に関するさまざまな課題があることを取り上げました。

特に、テレワーク導入にあたっては「人事制度の見直し」が重要課題となっています。
実際にテレワークを導入している企業では、働き方の変化に合わせてさまざまな方法で評価を行っていることをご紹介しました。
その中でも、特にテレワーク時代の人事評価制度として注目を集めているのが「成果型」の評価制度です。

では、「成果」で評価を行うためには、具体的にどのような施策を行えばいいのでしょうか?

後編の記事では、成果で人事評価を行うための具体的な手順を解説していきます。
また、約400人のスタッフがテレワークで働くオンラインアシスタントサービス「HELP YOU」(運営:株式会社ニット)の評価方法についても、人事担当者へのインタビューとともにご紹介する予定です。

ぜひ後編の記事も楽しみにお待ちください。

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