海外市場調査のポイントは?国内調査との違いをリサーチャーが詳しく解説

■執筆者
森勝宣:株式会社ニット
新卒でマーケティングリサーチ会社で入社。海外調査案件の受託調査をディレクターとして数多く担当。ニットにジョイン後は、マーケティングと海外進出サポート事業を担当。日本の中小企業の海外進出について、戦略からサポート。

市場調査前に実施すること

市場調査は仮説を検証するために行う

市場調査を開始するにあたり、調査背景、調査目的、調査テーマを明確にすることが一番重要です。
・何のために知りたいのか
・どういうデータが必要なのか
・調査後に何をしたいのか

市場調査の依頼を受ける際にはその辺りの情報が曖昧なこともあります。
例えば、「自社の商品が海外で売れるのか知りたい」という依頼を受けたとします。海外で売ることが可能かどうかという調査結果だけでは足りないので、もう少し深堀りをして、まず需要があるのか、あれば次にどういうアクションを起こすのが良いか、需要がない場合はどのようなアクションを起こすのが良いかなど、データを元にした次のアクションまで決めてこそ調査と言うことができます。

また、調査は仮説立証によく使われます。
例えば、「自社商品が海外で売れるかどうか知りたい。現地調査は終わっていて需要はありそうだ。日本製の商品は高く売れるだろう。」という仮説があったとします。
その場合、現地の競合他社はいくらで販売しているか、消費者はいくらであれば買うかなどのデータを元に販売適正価格の絶対値を求めることができます。このように仮説に対して調査結果がどうだったか明示することも重要です。

海外の市場調査の設計について(地域、対象者、サンプル数、調査時期)

どの地域のどんな人に対して調査をするかを決めます。地域に関しては対象の商品が売っている場所に限定することもあります。
例えば、高価格帯の商品のデータを農村部で取っても期待する結果は得られないので、その国や都市のトップ5に絞ったりします。逆に石鹸やシャンプーなど誰でも買うであろう商品のデータは全土で取るなど、商品によって判断します。
更に、調査目的達成や仮説立証ができる条件を付け足します。高価格帯の商品であれば上位5都市のなかで収入条件をつけたり、ターゲットが女性であれば女性に限定したりという具合です。

調査サンプル数をどれくらい取るかについては予算に左右されるところが最も大きいですが、どのような調査軸かという点も関与します。
一般的にサンプルの最小値は30と言われていますが、30サンプルだと最大で結果にプラスマイナス18%の誤差が生じます。つまり今回の結果が10%だったとして、次回は28%かもしれないし、1%かもしれないということです。調査業界ではサンプル数が少ないと誤差が大きくリスクが高まるので、できれば50サンプル以上は取得するのが望ましいとされています。

調査時期で気を付けなければいけないのは、ラマダン、レバラン、春節などの長期休暇です。
「この商品を持っているか?」など、事実を問う実態調査をするときは長期休暇中でも問題ないですが、「この商品を買いたいか?」などの意識を問う調査は避けた方が良いです。
休暇で気が大きくなっているので「買いたい」と答える人が増えるなど、調査結果に影響が出ることがあるからです。
また、特定の日時に調査しなければならない場合も注意が必要です。広告に関する調査の場合は商品販売後に調査するなど、求めている調査結果を考えれば必然的に最適な調査時期がわかるはずです。

海外市場調査の質問項目について

定量調査の質問項目について、日本の会社にありがちな悪い例として「とりあえずあれもこれも聞いておこう」と沢山質問してしまうケースがあります。大手調査会社ではデータのクオリティーを担保できるのは回答時間15分以内、最大40問までとしています。

それ以上は回答者の集中力が続かず、調査結果が歪んでしまうからです。これは大手調査会社の調査でも実証済みで、15分を越えると普段はしっかりと回答するモニターでも飽きてしまい、注意力が低下して回答がブレてしまいます。また、基本的にどの国においても回答者はPCではなく携帯電話を使うことが多いので、携帯電話で20分も30分も回答しなければならないとなると非常に負荷が高まります。

質問の聞き方にも工夫が必要です。日本の調査業界では、回答者に対して事細かに説明するのが礼儀とされています。しかし現代では携帯電話で回答するということもあり、長ければ長いほど高確率で読み飛ばされてしまいます。
特に海外においてその傾向は顕著です。例えば次の例を見てみましょう。

「…では、最近あなたがスーパーに行った時のことを思い出してください。その時にあなたが買ったものは何ですか?」

「一週間以内にスーパーで買った飲み物を教えてください。」

後者の方が回答者に伝わりやすく読み飛ばされるリスクも低いでしょう。また、前者で使われている「最近」という言葉は人によって定義が違うので、このような曖昧でわかりにくい表現も避けた方が良いです。
大切なのは、質問は調査目的達成や仮説立証に関わることだけにする、内容は簡潔にわかりやすくすることです。

市場調査後に実施すること


調査後に実施することとしては、基本的に調査設計をした時点で調査の最終目的は決まっているはずなので、目的に沿った行動を起こすだけです。仮に、事前に立てた仮説と調査結果が全く違った時は、調査結果からどのような仮説を導けるかを分析して次回の調査に活かします。PDCA(Plan=計画、D=実行、Check=評価、Action=改善)のサイクルを回すということです。

国内と海外の市場調査の違い

回答者の違い

海外では不正回答者(いい加減に回答する人)が多い傾向にあります。先進国ではどんなパネル(調査対象者)であってもそこまで回答に差が出にくいのに対し、新興国では差が出やすい傾向にあります。
きちんと自社でパネルを管理している会社のパネルを使うことで、そのリスクを減らすことができます。

また、新興国は若年層が多く高齢層が少ない人口分布であること、且つ50歳以上の高齢層や低収入の農村部ではインターネット普及率が低いことから、高齢層のデータが特に取りづらいことが特徴として挙げられます。

国ごとに合わせたローカライズ

海外に普及していないサービスについて質問する時は、現地で類似するサービスを探さなければなりません。有名な例で言うと中国ではGoogle、Facebook、Twitterが使えないのでWeiboやWeChatに変更するなどです。他にも、国によって飲酒年齢が違ったり、宗教上の理由で聞いてはいけないこともあったりするので現地に合わせた調査票のローカライズが必要です。更に、質問項目の翻訳を間違うと調査結果が全く使えなくなってしまうので慎重に行わなければなりません。

そのため、現地の事情に精通している会社に依頼すること、翻訳はグーグル翻訳などで済まさず、現地語を理解できる人に依頼することが、正しい調査結果を得るために必要なことと言えます。

異なる国のデータ比較の仕方

複数の異なる国間での調査結果を比較する際、単純な数字の比較が出来ないのが難しいところです。
例えば「この商品を買いたいか?」という質問に対して、中国のが70%、タイが60%、日本が10%の結果だったとします。この結果を見て「中国が一番売れそうだ」とすぐに判断することはできません。なぜなら、国によって価値観や国民性が違うからです。回答方法が5段階だった場合、日本人は3(真ん中)に付けたがる傾向にあるけれど中国は4や5(高評価)を付けたがる傾向にあるなど、同じ指標で結果を比較することができないのです。

そんな時は、例えば同国内で競合他社の製品データも取り、二つの商品の差異を比較するという方法をとります。日本で自社商品が20%、他社商品が2%、即ち18%の差、中国で自社調品70%、他社商品65%、即ち5%の差だった場合は、差の大きい日本の方が自社商品の評価が高いという風に判断ができます。他にも、国ごとに商品カテゴリの平均値を取って自社商品の結果と比較するという方法もあります。
単純な調査結果の比較ではなく、同じ指標で評価できるデータを用いることで国別の比較が可能になります。

また、一つの国に複数民族が混在する場合も気を付けなければなりません。例えば黒人と白人が使う化粧品は大きく異なるので、構成比を考慮して比較するなどの対応が必要です。東南アジアでは特にマレーシアやシンガポールが他民族の国とされています。

SECについて(特に新興国での調査の場合)


SECとは「Socio-Economic Class」の略で、社会経済クラスを表します。日本と比べて貧富の差が大きい新興国で調査を行う場合、対象者条件検討の際にSECを考慮することが必須です。
多くの場合、SECはA~Eの5段階で定義されます。ABが上位層、Cが中間層、DEが下位層です。
注意しなけれなならないのは、SECのABは必ずしも社会全体の上位層ではないことです。あくまでもアンケート回答者の中の上位層に過ぎないため、厳密に高価格帯商品の調査をしたいのであれば世帯収入によって的を絞るなどの対応が必要になります。

成功する調査、失敗する調査


前述のことに留意すれば意味のある市場調査をすることが出来ると思います。
調査前に調査背景、調査目的、調査テーマを明確にすることが大切と述べましたが、それがしっかりとできていないとやはり有益な結果は得られません。
逆にそれさえしっかりと出来ていれば調査結果が芳しくなかったとしても、次に活かすことのできる意味のある失敗と言えるでしょう。

多いケースとして、MTGでは調査目的を文言化できるけれど、書面に起こした時に不足点が目立つといったケースがあります。クライアント側、調査を受託する側、どちらが書類を作成するかはケースバイケースですが、少なくとも受託側はクライアントが意図する調査をテキスト化して論理的に抜け漏れの無いようにしなければなりません。そうしないと、調査結果を見た後で「知りたいことは知れたけど次に繋がらなかった」「これも聞いておけばよかった」と気付くことになるからです。

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