【経験者インタビュー】 大手小売業イオンでASEAN事業立ち上げを経験。今後はミャンマーと日本の橋渡しに注力

■インタビュイー
磯崎拝:2020年まで、大手小売業イオンに35年間勤務。
店舗営業、スタッフを歴任後、2011年よりベトナムやミャンマー等ASEAN各国で管理担当として合弁事業会社の立ち上げに取組む。

現在、外国人の人材派遣会社の海外事業展開を支援しながら、渡航機会をうかがっている。
残りの人生において、国難にあるミャンマーの応援団を自認し、ミャンマーにおける人材育成と、同国の経済発展の一助となること(ミャンマーの方々の笑顔を作る)をモットーにしている。

―まずは磯崎さんのご経歴を教えてください。

35年前、当時のジャスコ、今のイオン株式会社に入社しました。その後、店舗の営業、広報、秘書室等の本社勤務を経て、2011年から約10年間、マレーシア、ベトナム、ミャンマーへ、ASEANの合弁事業の立ち上げの管理担当として実施・運営をしてきました。
中でもミャンマーは4~5年ほど長期滞在し、特に気に入った国だったので、昨年自動車オークションの会社を立ち上げようと独立しましたが、コロナ禍やクーデターの影響で日本へ一時帰国し待機している状態です。
現在は人材会社の顧問にも就任しており、ミャンマーと日本の人材の橋渡しを行っています。これまで小売や物流をメインの仕事とし、ASEANの新規立ち上げにも携わった経験から、ミャンマーの経済発展の一助となれればと思い活動しています。

―ミャンマーは約10年の間、不安定な状態が続いていますね。

ミャンマーは確かにいま大変な状態で、為替が不安定です。基軸通貨の「チャット」は安くなっており、2020年度下半期に行われたJETROによる景況感調査ではマイナス30%程です。
ただ、週一回ほど情報交換をしているミャンマーの経営者によれば、都市部で生活をする分にはそれほど危険ではないとのことです。

クーデターや、特にコロナウィルスの流行は経済に影響を与えていますが、年末にかけて通常の状態に戻っていくのではないかと私は予想しています。ですからミャンマー進出を考えている方が覚悟を持って臨めば、そこまでクーデターが障害となることは無いと思います。

ミャンマーの一番の売りは❝人間❞です。私はASEANの中でおそらくミャンマーが一番日本と相性の良い国だと思っていますので、今後日本との繋がりも更に増えていくと考えています。

―ミャンマーのトレンドは何ですか?


1つ目は、日本と同じですがフードデリバリーです。コロナ禍、クーデターの影響で以前の何倍にも伸びています。

2つ目は、携帯電話関連のサービスです。ミャンマーでは3~4年前から携帯の普及率がほぼ100%になり、クーデター前は日本よりWi-Fi環境が良いくらいの時期もありました。
例えば東南アジア最大手のタクシーアプリ「Grab」や、無料ゲームアプリ、デリバリーアプリが特に盛んに活用されています。
他の東南アジア諸国と同じように、ミャンマーも携帯電話中心の生活、文化、社会に本格的に突入している状況です。

また、ミャンマーで一番影響力があるマーケティングツールは断トツでFacebookです。日本ではInstagramやLINEなど数々のSNSが活用されていると思いますが、ミャンマーではFacebookでの情報取得、販売促進、友人間のコミュニケーションが主流です。

―ミャンマーの魅力を詳しく教えてください。

1つ目は、5,000万人の人口です。ミャンマーは中心都市であるヤンゴンとマンダレーに1,000万人以上人口が集中しており、平均年齢は20代と若く、人口ボーナスも今後30~40年続いていくと思われます。ですからミャンマーは製造業の外注拠点としてではなく、小売・物流業などによって内需を充実させていくことが期待できます。ミャンマーはクーデター前まで「アジア最後のフロンティア」とよく言われていました。
経済は今後持ち直していくと私は信じていますし、クーデターで少し遠回りはしていますが、豊富な人口に基づく内需の成功が見込めることがミャンマーの最大の魅力だと思います

2つ目は、仏教国であることです。ミャンマーは特に上座部仏教、つまり戒律に厳しい仏教の国です。礼儀や仏教的発想を非常に重んじるため、日本人が理解しやすい文化と言えます。
私はASEANに関わっている時に様々な国を訪れましたが、ミャンマー人はすれ違う時に笑顔で会釈をするなど、日本特有の行間を読むようなコミュニケーションにも対応できる優しさがありました。
タイが「微笑みの国」とよく言われるのに対してミャンマーは、「まず相手の気持ちを考える国」だと思います。
よく特定技能の派遣事業でミャンマー人が介護やサービス業に向いていると言われる所以は、そういった人々の性質にあります。

ですからミャンマーは、クーデターの行方は注視しないといけないものの、ビジネスにおいては間違いなく魅力に溢れている国だと思います。おそらくミャンマーに長くいる企業の方は皆同じことを言われるだろうと思います。

―進出している企業、サービスにはどんな例がありますか?

2018年頃までは旅行業、小売・卸業が多く進出していました。製造業において近年発展が見られるベトナムとは違い、ミャンマーの製造業はこれからという状況でした。

コロナ流行の1年程前からは、通信サービス業の進出が目立ち始めました。現在ミャンマーでは携帯会社が最大のITビジネスですが、モバイルマネー、タクシーアプリ、フードデリバリーアプリなどの携帯電話を取り巻くサービスが特に発展しました。
2019年にかけてそういったIT関連の中小企業、スタートアップの進出が多かったと思います。ただ、コロナ流行やクーデターの影響でおよそ半分くらいの企業はビジネスがストップしている可能性があります。

IT関連の企業の進出については、日本はまだまだ控え目と言っていいくらいで、中国大手のメッセンジャーアプリ「Wechat」を運営するテンセントの関係会社は、2015年頃からミャンマーに調査拠点を作ってましたし、隣接する国のタイの企業も積極的に進出していました。

―日本とミャンマーのビジネスにおける差異は何ですか?

1つ目に、ミャンマーは個人と個人のつながりをとても大切にするということです。
例えばミャンマー側で知名度の高い日本企業が取引先候補として挙がっていたとしても、担当者の間に信頼関係が生まれるまではビジネスは発展しません。
何度も顔と顔を合わせて意見交換し、人物として信頼を得るまではビジネスの紹介などをしてもらえないのです。
ミャンマーでビジネスをする際には、どこの企業に所属しているかよりも個人として信頼を得ることが重要です。

2つ目は、最終合意に柔軟性が必要ということです。
契約を進める過程において、日本の場合は弁護士が段階を踏んで進めていきますが、ミャンマーは良くも悪くも最終合意が一番難関と言えます。
一般的に日本企業では稟議や決裁を経て契約を進めるので、最終合意の際には譲れない点が多いと思います。しかし、ミャンマーでは日本や欧米の基準は通用しません。最終的な調整に時間を要することも多く、日本企業側も譲れることと譲れないことのバランスを考えて最終合意を乗り切らないといけません。

例えば、日本製品の品質は突出して高いですが、今では中国やベトナム製の商品も8割くらいの品質に達しています。しかし価格は中国やベトナム製の方が遥かに安いのが現状です。ですから、これから日本の商品をミャンマーで売りたい場合は、最初は利益にあまり拘らず“お試し価格”のような形で安く販売したり、通常は袋詰めでのみ販売している商品をバラ売りで販売したりするなどの妥協や調整が必要な場合もあります。
商品や企業名の認知度が徐々に上がっていけば日本企業の望むやり方で商売を進めやすくなることもありますが、ミャンマーで初めてマーケティングや契約をする際には、相手企業との最初の握手の仕方に気を付ける必要があります。

3点目はASEAN全体に通じることですが、相手企業と家族ぐるみの付き合いをすることも大切ということです。
財閥系の企業の場合は別だと思いますが、日本企業がミャンマーの中規模や小規模のローカル企業とビジネスをする機会も多くあると思います。
その場合、家族経営であることも多いので先方の家族と良好な関係を保っていた方が協力を得やすいということもあります。

2点目、3点目はテクニック論になりますがが、1点目の個人の繋がりを大切にするという点はやはり最重要です。

―ミャンマーでは日本のどのような商品が受け入れられやすいですか?

まず1つ目は、化粧品、医療製品、健康食品です。ミャンマーだけではありませんが、SK-Ⅱ、資生堂などの商品は特に人気があります。ミャンマー女性の美に対する意識は非常に高いので、女性を対象にするビジネスは有望だと思います。
以前、業務の一環で一カ月に一回程ミャンマーのショッピングセンターに出向いて人々が購入した商品の写真を撮るなどの調査をしたことがあります。2015年前後の調査が最後でしたが、ファッション、化粧品は女性が一番お金を使う分野でした。ミャンマーでは路面店で買い物をする人々が7割ほどを占めますが、Citimartなどの大手スーパーで買い物をする人々も徐々に増えてきています。

2つ目は、物流です。特にミャンマーは生鮮食品などを運ぶコールドチェーンが充実していません。大抵の場合、現地の大手小売業が自前のトラックで商品を運んでいて、それも常温の商品が多く、魚や野菜を遠い場所に運ぶのが不得意でした。こういった物流サービスは今後絶対に必要だと思います。

3つ目は、EコマースなどのIT関連サービスです。携帯電話の普及率が100%になったこともあり、これから飛躍的に発展していくのではないかと予想しています。ミャンマーはまだあまり豊かな国ではないので人々が商品を購入する際には、家族や友人からお勧めされたら買う、もしくはかなり情報を収集してから買うという慎重さがあります。ですからEコマースを展開するにはきめ細かい顧客対応が必要だとは思いますが、Amazonなどの大手が参入するにはマーケットが小さすぎるので、日本企業にも大いにチャンスがあると思います。

4つ目に、安全・安心に関する技術や知識を提供できる企業も求められています。今でもミャンマーはコロナウィルスに苦しめられているため、人々の関心も高まっていると思います。

最後に、教育関連サービスです。ミャンマーでは非常に厳しい進学競争があり、大学進学の共通テストに合格して大学へ進めるのは全体の3割程度です。ですから専門大学や短期大学、学習塾なども需要があると思います。

―これからミャンマーへ進出する企業はどのようなステップを踏むべきでしょうか?

現地に詳しい方とチームを組んで進めていくのが一番です。ミャンマーには「在ミャンマー日本商工会議所」という大きな組織があり、大手銀行や商社も参加しています。そのうち1/3程度が中小企業なので、ミャンマーで起業して様々な成功や失敗を経験して来られた方の話を聞くことが出来ると思います。そのような方々とタッグを組み、調査をしながら、1年くらいの計画で市場に入っていくというステップが良いと思います。
また、「ジェトロ」という政府組織が企業を設立する手助けをしてくれます。政府組織ということで敬遠される方もいらっしゃいますが、ミャンマーの場合は中小企業からスタートアップまで色々な相談に乗ってくれるイメージがあります。私もミャンマーには色々なネットワークがあるので、相談に乗ることが出来ると思います。
やはりメディアは情報を切り取って報道しているので、企業の責任者が現地へ足を運んで情報を取ってくるということも必要だと思います。

―今ご自身が海外に進出するならどの国で何をやりますか?

ミャンマーの方々が大好きなのでなんとかミャンマーでビジネスをしたいと思います。ミャンマーは今後、人材の育成が大切になってくると思っています。「循環型の派遣」と私は呼んでいるのですが、ミャンマーの方が日本で技術を学んで、それを現地に持ち帰って生かす、という人材作りの事業に賭けたいなと思っています。
また、自動車に関わる事業、特に中古車のマーケットを展開しようと思っておりましたので、今はタイミングが悪いですが将来的には再び取り組んでいきたいと思っています。

しかし、ミャンマーはクーデターの影響で遅れを取っていることも事実です。ASEANの中では中国の影響は避けて通れず、「チャイナプラスワン」という考え方は根強く存在しています。いま一番ポテンシャルがあるのは、豊富な人口と順調な経済状況を誇るベトナムとインドネシアだと思います。個人的にベトナムは自動車や医療機器関連の下請け製造業、インドネシアは高所得者向けのサービス、例えばフィットネスクラブなど娯楽施設にポテンシャルがあるのではないかなと思います。

ただ最後に強調したいのですが、やはり私は第一にミャンマーの応援団でありたいと思っていますので、いまは苦難の時ではありますが賛同していただける方がいらっしゃれば是非相談に乗らせていただきたいと思っています。

―当社にもミャンマー進出を考えている企業からのご相談が既にありますので、同じことを考えている方々は、少なくない数いると思います。非常に貴重なお話でした。ありがとうございました。

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