【経験者インタビュー】30年海外勤務、元キヤノンのグローバルリーダーが語る東南アジア展開の第一歩

■インタビュイー
小西謙作:元キヤノン – 前キヤノン東南アジア/南アジア代表、理事。
キヤノン株式会社に新卒で入社。社会人40年のうち、30年が海外駐在。海外の企業の営業、企画、経営のほぼ全ての部門を経験し、人材育成やコンプライアンスにも精通している。特にアジアでは、現地の有力者とのネットワークも持っており、近年では大手コンサルタント会社の業務協力者としてアジア展開の支援をする。

計30年間の海外勤務で培ったグローバル感覚

インタビュー中キャプチャ
―まずは小西さんの経歴を教えてください。

大学を卒業して、1978年にキヤノン株式会社に入社しました。
複写機の予算管理や製造販売調整などに従事した後、1982年にオーストラリアに赴任しました。
オーストラリアではセールスマンの管理、コミッションの計算、予算作成など、複写機の販売に関わる管理系業務をほぼ全て担当しました。
1991年末、今度はアメリカへ赴任しました。
アメリカでも引き続き複写機関連の仕事をしましたが、途中からワシントンDCへ移り、GSA (General Services Administration)、米連邦政府一般調達局に対する販売の仕事をしました。

2001年、シンガポールへ国内販売会社の社長として赴任しました。
同様に香港、インドの国内販売社長も務めました。
その後、もう一度シンガポールへ戻り、東南アジアの総括販売会社の社長を2016年半ばまで務めました。それから、当時Canonシンガポールが買収したマレーシアの会社のPMI(Post Merger Integration)のためにマレーシアに異動しました。
そして、2019年1月に日本へ帰国して退社しました。
合計40年の勤続年数のうち30年は海外、最後の約20年は東南アジアに赴任していました。

▼早見表
・1978年 キヤノン株式会社入社
・1982年 オーストラリア赴任
・1988年 日本へ帰国
・1991年 アメリカへ赴任
・1998年 日本へ帰国
・2001年 シンガポール、香港、インド赴任
・2016年 マレーシア赴任
・2019年 日本へ帰国、退社、​​デロイトトーマツとアドバイザリー業務受託

―最も繋がりの深い地域はどこですか?

東南アジアですね。直近で赴任していた地域ですし、会社の社長として赴任していたのでネットワークも築くことができました。

ー東南アジアの特徴はどのようなところですか?

東南アジアと一言で言っても、シンガポールのように一人当たりのGDPが日本より大きい国から、最貧国の一つであるミャンマーまで様々な国があります。
人口についても、インドネシアのような2億人を抱えている国や、シンガポール・香港のように400万~700万人程度の国もあります。ですから特徴を一概に言うのは難しいです。
しかし、ヨーロッパのように関税や通貨などが統括され始め、一つの商圏としてある程度まとまった動きをするエリアと比較すると、東南アジアは国ごとの格差が非常に大きいと言えます。
東南アジアは言葉や宗教も違いますし、輸出入に関してはお互いに税金を掛けあっており、ASEANのような全体組織はあるものの各々のマーケットが意外に小さいのが特徴です。
ヨーロッパは地域の総的な販売組織(量販店等)がありますが、東南アジアはその辺りも未発達なので国ごとに丁寧に対応する必要があります。

また、シンガポールや香港は日本よりも少子化が進んでいて、「自国で生涯ゆっくり過ごそう」と考える若者も多いのに対し、例えばインドは「昨日よりも今日、今日よりも明日が豊かになる」と考える人が多く、日本の高度経済成長以上の熱気があります。

“as is”で受け入れられやすい日本のサービス。似ていることが東南アジア市場の魅力


―ビジネスの魅力は成長が見込めるところですか?

何に重きをおくかによってですが、日本の企業の要求を満たしてくれる国がどこかにはあるだろうという期待が持てることです。
売上を伸ばしたければインドネシア・タイ・ベトナム、バリューのあるものを丁寧に売りたければシンガポールという具合です。

また、日本との親和性がかなり高いのも魅力の一つです。
例えば欧米人の味覚は日本人とは本質的に違いますが、東南アジア、特に香港・シンガポール・マレーシア・インドネシアのお金持ちの味覚は日本とほぼ同じと考えてよいです。
ですから日本と同じものを持って行って販売しても、”as is”(ほぼそのまま)で受け入れられる可能性が非常に高い。
体型に関しても、ラテン系やアングロ・サクソンの方々はそもそも身体が大きかったり、首の大きさに比べて手足が非常に長かったり日本人とは全然違います。
一方、東南アジアの方々は基本的には日本人と同じ体型なので日本のものをそのまま持って行って販売しても大丈夫な場合が多いです。

更に、時差が前後1~2時間程度で収まるのは初めて海外に出る企業にとってメリットだと思います。

―小西さんの経験の中で、特に印象に残っているケースを教えてください。

東南アジアは多くの商品が日本と”as is”(ほぼそのまま)で受け入れられる一方、既にかなりの日本企業が進出していますので、企業側が考え方や商品の特徴を把握してないとすぐに撤退するケースが多いのが印象的です。

―最近進出している例ではどのような業種が目立ちますか?

最近はメーカーよりも飲食店やサービス業が多いような気がします
例えば10分間で散髪できる理髪店のチェーン店や靴修理のチェーン店などです。
従来、東南アジアでは床屋さんは髪をただ切るだけで、丁寧な施術をする理髪店はほとんどありませんでした。
シンガポールのような一部の国では、日本人向けにそういったサービスがあっても非常に高価格でした。
そういったサービスをクオリティは維持しつつ安価でローカルの方に提供したのが床屋さんの例です。
日本発のサービスを若干手直しして、現地に受け入れられるように価格帯をコントロールして提供する進出例は、今後もありえると思います。

―そのようなサービス業進出の背景にはテクノロジーの変化がありますか?

そうですね。日本の漫画・キャラクターがSNS等の普及によって世界的に広まり、日本のソフトパワーが見直されてきています。そういう日本文化に対する憧れがビジネスを盛んにしているというのも事実です。
シンガポール・タイ・マレーシアではコスプレが人気で、コロナ流行前は10万人規模で人を集めていた時期もありました。そんなところにビジネスチャンスがあるのかもしれないです。

キャリアとプライベートの考え方が日本と根本的に違う


―日本との差異はどんなところですか?

色んな例があって難しいですが、よく言われるのは東南アジアに限らず日本と海外ではキャリアと私生活についての考え方が違うということです。
海外の方は、まず自分あっての会社。自分や家族の生活を豊かにするための仕事、という考え方で逆はあり得ません。
日本人は、まず会社あっての自分。会社のためなら自分の生活や家族が犠牲になってもやむを得ないというのが一般的です。
その辺りの考え方の違いは、初めて海外へ出た際に日本人が違和感を感じるところかもしれないですね。

―欧米諸国だけではなく、東南アジアもそのような考え方なのですね。

基本的に東南アジアもそうです。東南アジアの場合は更にプラスして自分の家族や一族の利益を優先するという要素もあります。

―仕事のために自己を犠牲にするというような性質は日本特有のものですか?

日本はその傾向が強いと言えます。キヤノンでも、海外支社の現地社員を異国へ出向させるようなことがありますが、その場合もあくまで転勤なり新しい仕事が自分のキャリアや成長、昇進にどう繋がるかが明確に理解できれば受諾するというスタンスで、「会社の命令だから」というロジックではかなり無理があります。その辺りの価値観は同じアジアの国と言えど東南アジアと日本では異なります。

海外に出て10年後、20年後の明確なビジョンを描くことが海外進出の第一歩


―初めて海外に出る方々が気を付けた方が良いことは何ですか?

前述の価値観の違いを把握することも大切ですが、それ以上に経営をされている方やオーナー様は何故海外に進出したいのか、海外で何をしたいのか、目標をかなり明確にされることが重要だと思います。そうでないと色々なトラブルが起こった時に判断がブレる事になり兼ねないからです。

目標は10年後、20年後にそのエリアでどうなっていればいいのか、どの規模でやっていたいのか、また日本本社の活動にどのようなインパクトを与えるのかなど、中長期的なビジョンを持つことが特に重要です。
ビジョンが明確になった上で、だからシンガポール、ベトナム、あるいはタイなど特定の国に進出するのだという話になってくる訳です。

場合によってはご縁で紹介されて海外進出するケースもあるとは思いますが、その場合も同様にビジョンを明確にすることがとても大切です。

―ビジョンがしっかりある場合、どのようなビジネスが相性が良いですか?

ビジネスの方法についても、前述のビジョンを明確にすることと直結します。
メーカーなど商品を実際に作っている場合には、海外で安く製造して日本で販売するという方法と、海外で製造したものを現地で販売するという方法があります。

前者のケースでは、日本で要求される仕様や品質を第一に考えなければいけません。
後者のケースでは、最低限の品質は確保しなければいけませんが品質を高めすぎると価格も高くなってしまうので、その折り合いをどうつけるかが課題になってきます。

少し話は変わりますが、品質に対する考え方はキヤノンを含めて日本と他の国のメーカーで大きく違います。
例えば、日本は最初から品質を作り込むので、完成度の高い壊れにくい商品が出来上がります。そのためイニシャルコストは高くなり、修理費も高くなりがちです。
一方、例えば韓国では壊れるのが前提というと語弊がありますが、品質は作り込む必要がなく維持するもの、サービスによって補填できればよいという考え方なので、イニシャルコストは結構安くできるのです。

このように、工場を海外へ進出させる場合は最終製品をどのように展開するかによってやり方も左右されます。
今は各国に日系の工業団地が存在するので、現地に調査・研究をしに行けば、工場管理の方などから色々な話が聞けると思います。
ゼロから作っていくのではなくて、先人が作り上げてきた基盤を活用するのも良いでしょう。

東南アジアでの惣菜売りに勝機あり?富裕層に向けたデリカテッセンは面白そう


―ここまでは小西さんの経験を話していただきました。では、もしご自身で海外に出る場合、どの国でどんなビジネスをやりますか?

自分でビジネスをするなら、日本のデパ地下のような高級惣菜、練り物などを海外で提供できると面白いと思います。
例えば、香港では「City’super」という日系の高級スーパーがあって、欧米系のデリカテッセンなどが売られているのですが、そこで日本のデパ地下のような商品も販売してみたいです。
単価が高くなるので大量に売ることはできないですが、面白い展開になりそうだと思います。
シンガポール・香港・マレーシア・ジャカルタなどの国々の高所得者は、日本に対する知識がものすごい豊富です。彼らが旅行で日本へ来る際には、我々日本人でも容易に行くことができないような店を海外から予約して楽しむ程です。
ですから彼らは高品質な日本の味を既に知っていて、それに匹敵する品質を提供しなければならないという点で難しさはありますが、日本版デリカテッセンなどが展開できれば面白いかなと思っています。

―本職でいらっしゃったキヤノン製品とは全然方向性が違うんですね。

機械や電化製品などは既にありふれていますし、安価で高品質な100円均一なども既に展開されているので、その路線で行くのはかなり斬新なものでないと難しいと思います。
その点、前述の惣菜や練り物はニッチだと思います。

―今後日本企業が売り上げ規模を維持していくためには、東南アジアも含め、海外に市場を求めることが必要になってくると思います。そういった海外進出を考えている企業にとって、今回の、「5年後10年後の目標を持つ」という考えはとても参考になったかと思います。非常に有益なお話、ありがとうございました。

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