DX人材の育成が日本企業の生産性向上のカギを握る

デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進が急務となっている日本企業。
コロナ禍で日本政府・企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)の遅れが鮮明となり、挽回が急がれる中、課題が浮上しています。
それがDX人材の不足問題です。
DX人材の不足はデジタルトランスフォーメーション(DX)遅れの一因ともいわれています。
DX人材の育成は、企業の未来を担う事業です。事業変革が成功すれば生産性は向上し、事業拡大の可能性が高くなります。一方で成功できなければ、存続さえ難しくなるケースもあります。
このような危機を回避するデジタルトランスフォーメーション(DX)人材育成の重要性を本文で説明していきます。
DX推進を阻むDX人材の不足
デジタルトランスフォーメーション(DX)人材が不足している背景を見ていきましょう。
DX人材はなぜ不足しているのか?
DX人材はなぜ不足しているのか。それは、IT人材がベンダー企業(システム開発・製品販売・提供企業)に集中しているからです。
情報処理推進機構の調査によると、日本の IT人材の72%がIT企業で働いていることが明らかになっています。
これまで日本ではシステム開発・運用は、ITベンダー企業へ業務委託するスタイルが一般的でした。そのため、デジタルトランスフォーメーション(DX)人材はIT企業に集中してしまい、DX人材を育成する環境が一般企業にはなかったといいます。
参考:日本経済新聞「DX担い手、米の1割 AIに必須『STEM』人材へ投資急務」
例えば、米国の銀行では、社員の約3割がITエンジニア人材です。しかし日本では約5%にも達していません。
今なお不足しているDX人材ですが、今後はさらにIT・DX人材を採用・育成していく必要が求められています。
DX人材の争奪戦
ただでさえ不足している デジタルトランスフォーメーション(DX)人材ですが、今後はDX人材争奪戦の激化が予想されています。
システム開発や運用を社内で内製化する流れがさらに進むからです。
近年は「ノーコード」「ローコード」の登場によって、アプリケーションシステムの開発が容易になり、内製化に舵を切る企業も増えています。
※ノーコード:ソースコードを使用せず、アプリケーションシステムが開発できるサービス
※ローコード:少ないソースコードでアプリケーションシステムが開発できるサービス
IDC Japan株式会社が実施したノーコード・ローコード導入企業への調査によると、
導入済み企業の62.3%は、「IT部門以外の部門や職種でもアプリケーションを開発できるようになっている」
出典:アイマガジン株式会社「ローコード/ノーコード導入企業の6割強が『IT部門以外の部門や職種でもアプリケーション開発』 ~IDC Japanが最新調査結果を発表、『コスト削減』が導入理由に浮上 」
と回答しています。
さらにクラウドの登場によって、ITインフラストラクチャーを社内で柔軟に利用できるようにもなっています。
今後は社内での小規模開発・運用が可能になるため、企業間でますます激しくデジタルトランスフォーメーション(DX)人材を奪い合うことになるでしょう。
DXに必要な人材はデジタル技術職だけではない
デジタルトランスフォーメーション(DX) に必要な人材は、デジタル技術職だけではありません。デジタル事業に対応するためには、さまざまな職種が必要となります。
職種名(人材名) | 説明 |
プロダクトマネージャー | デジタル事業の実現を主導するリーダー格の人材 |
ビジネスデザイナー | デジタル事業(マーケティング含む)の企画・立案・推進等を担う人材 |
テックリード(エンジニアリングマネージャー、アーキテクト) | デジタル事業に関するシステムの設計から実装ができる人材 |
データサイエンティスト | 事業・業務に精通したデータ解析・分析ができる人材 |
先端技術エンジニア | 機械学習、ブロックチェーンなどの先進的なデジタル技術を担う人材 |
UI/UXデザイナー | デジタル事業に関するシステムのユーザー向けデザインを担当する人材 |
エンジニア/プログラマー | デジタル事業に関するシステムの実装やインフラ構築、保守・運用、セキュリティ等を担う人材 |
参考:情報処理推進機構(IPA)「DX白書2021_第3部_デジタル時代の人材」
上記のDX職種の中で、日本企業ではプロダクトマネージャー、ビジネスデザイナー、データサイエンティストが55%も不足しています。
つまり デジタルトランスフォーメーション(DX) 専門職だけでなく、一般社員といったビジネスパーソン側の人材育成も必要なのです。
例えばパソナグループはリスキリング(企業が社員に必要スキルを獲得させること)によって DX 人材の育成を推進しています。
デジタル技術を持っていなくても、DX 専門職と協力しながらプログラムを進める人材を必要としているからです。
この例を見ても社内のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進に必要なDX人材は、デジタル技術職だけではないとわかります。
参考:日本マイクロソフト株式会社「パソナグループがリスキリングによる DX 人材の育成を推進! ローコードのアプリ開発を Power Platform で実践」
DX人材の育成が必要な理由
デジタルトランスフォーメーション(DX) 人材の育成は始まったばかりで、まだ一般化されていないのが現状です。ここでは DX人材の育成が必要な理由を具体的に見ていきましょう。
業種や業態別で必要な情報は違う
デジタルトランスフォーメーション(DX) 人材の育成が必要な理由は、業種や業態別で必要な情報が違うからです。
このため、DX専門職を採用してもすぐにデジタルトランスフォーメーション(DX) を推進できるわけではなく、キャッチアップと教育が必要になります。
とはいえ、DX 専門職はITリテラシーが高いため、社内人材を育成するよりも早く目標に到達できるといわれています。
社内人材の育成も必要
外部からDX人材を採用するだけでなく、もちろん社内のデジタルトランスフォーメーション(DX)人材育成も大切です。社内を見渡せば、スキルを備えた人物が埋もれているかもしれません。
社内でDX人材を育成するメリットは二つあります。
一つ目は、デジタルトランスフォーメーション(DX)推進の体制を整えられることです。既存の業務内容やシステムを理解している社内人材が DX を行えば、どこを変革すべきかが早期に明確になりDX推進速度が上がります。
二つ目は、最適化したデジタルシステムを導入できることです。既存システムの問題を把握している社内人材が企画立案から関わることで、より適したデジタルシステムの導入がスムーズになります。
DX専門職とは別に社内人材の育成にも力を入れることで、デジタルトランスフォーメーション(DX)化の推進スピードが高まります。
デジタル技術の加速
最後の理由は、デジタル化の急激なシフトに対応するためです。デジタル化のスピードは大変速く、常にキャッチアップが求められます。
例えば小売業のデジタルトランスフォーメーション(DX)世界市場は、2020年から2027年に19.9%以上の成長率で成長するといわれています。
日本政府も国を挙げてデジタル改革を推進しており、DX先進国に追いつくためにはさらなる加速が必要。このスピード感に乗り遅れないためにも、DX人材の育成が必要となります。
参考:株式会社 PR TIMES「小売業におけるデジタルトランスフォーメーションの世界市場は、2027年まで年間平均成長率19.9%で成長すると予想される」
DX人材育成のメリット
デジタルトランスフォーメーション(DX)化の最大のメリットは、新しいビジネスモデルの開発による事業拡大とシステムのリスク回避です。この他にも様々なメリットがあります。
業務量が削減される
DX人材育成の一つ目のメリットは、業務量が削減されることです。
日経新聞が行った、銀行・証券・保険ビジネス大手24社への調査によると、デジタルトランスフォーメーション(DX)によって生産性が向上し、2020年までに約8,700人分の業務量が削減されたといいます。
さらには3年以内に29,769人分の削減が見込まれています。この計4万人分の業務量は、全従業員の業務量の1割に相当します。
DX人材を育成しDXを推進することで、これだけの業務削減が可能となります。
フロントオフィスへの配置転換
DX人材育成の二つ目のメリットは、削減された業務に携わる人材の配置転換が可能となることです。
バックオフィス業務から営業などのフロントオフィス業務へ配置転換することで、生産性は向上します。
さらにデジタルトランスフォーメーション(DX)化に伴いデータ化された社員のパーソナルデータ活用で、より迅速な適材適所への配置転換も可能になります。
行動や興味課題などのデジタル分析からアナログ視点ではない配属が可能になり、さらなる生産性向上と社内変革が見込まれています。
DX人材育成の課題
この章では、デジタルトランスフォーメーション(DX)人材育成の課題を詳しく解説していきます。
プラットフォームが確立されていない
デジタルトランスフォーメーション(DX)人材育成の一つ目の課題は、DX人材育成のプラットフォームが確立されていないということです。
経済産業省がデジタル人材育成の教育コンテンツ配信サイトを準備したり、大手企業が自社内にデジタルトランスフォーメーション(DX)人材育成プラットフォームを構築する動きはあります。
しかし、多くの日本企業は手探り状態でDX研修を外注したり、DX人材育成講師を外部から招いたりしているのが現状です。
また、DX人材育成プラットフォームの確立と同時に、次の課題も出てきます。
- DX人材に求める具体的なデジタルスキルと明確な評価基準の確立
- 企業内だけでなく、各企業の人材が集まるDX学習コミュニティの設立
- DXスキル・資格取得のサポート体制の構築など
これらの課題も解決しつつ、デジタルトランスフォーメーション(DX)人材育成プラットフォームを構築していかなければなりません。
DX人材の育成に時間がかかる
デジタルトランスフォーメーション(DX)人材育成の課題、二つ目はデジタルトランスフォーメーション(DX)人材の育成に時間がかかることです。
特に社内のDX人材を育成するには、相応の時間が必要です。
例を挙げると、三井住友フィナンシャルグループは従業員約5万人にデジタルスキルのオンライン研修を実施しました。
デジタルトランスフォーメーション(DX)の考え方や顧客ニーズなどを学ぶ機会を設け、9ヵ月かけて2万人の受講が完了したと報じられています。
また飲料ビジネス大手のキリンホールディングスは、社員を対象にしたオリジナルの DX 人材育成プログラムを実施。2024年までに1,500人の DX 人材育成を目標としています。
このように デジタルトランスフォーメーション(DX)人材を育成するには、少なくとも半年以上かかります。より本格的にDX人材育成を導入するなら数年単位で計画しなければならないでしょう。
参考:NHKニュース「大手銀行 DX人材育成を強化 取引先支援や新サービス開発へ 」
参考:キリンホールディングス株式会社「DX人材育成プログラム『キリンDX道場』を7月から開校 」
DX人材の育成方法
ここからは デジタルトランスフォーメーション(DX)人材の育成方法を解説していきます。
研修の設定
DX人材育成に不可欠なのが研修の設定です。
デジタルトランスフォーメーション(DX)に必要なスキルは多種多様。自社の変革に必要な知識や、社員の適性を考えながら内容を設定することをおすすめします。
(DXに必要な専門スキルの例)
- IoT システム技術
- AI
- クラウドコンピューティング
- UI/ UX デザイン
- Excel マクロ
- ビッグデータ活用
- マーケティングフレームワーク
- 情報セキュリティなど
DX専門職とその他の社員では、学ぶ内容が異なるケースもあります。一般社員ならAIやクラウドコンピュ―イングなどデジタル技術の基礎から学べるものがよいでしょう。
実践できる環境
学んだデジタルスキルを実践できる環境も必要です。ITスキルは学んだだけでは身につかず、OJT(職場内で行う訓練)のようにデジタルスキルの実践の場を設ける必要があります。
ダイキン工業の例を挙げます。同社の新入社員は入社後1年間、AI・IoTなどのデジタルスキルを学び、2年目から各事業部門に配属。新入社員の学びと現場社員の経験を掛け合わせ、既存のアプローチ法をイノベーションさせています。
このように学んだ デジタルスキルを活かせる場を作ることで、DX人材は育っていくのです。
参考:リクルートワークス研究所「ダイキン工業 常務執行役員 人事、総務担当 竹中直文氏|人事トップ30人とひもとく人事の未来」
キャッチアップのネットワーク
また デジタルトランスフォーメーション(DX) 人材の育成には、キャッチアップのネットワークも必要です。デジタル技術は常にアップデートされるため、新しいデジタル情報を取り入れる環境を与えなければなりません。
ネットワークづくりとしては、次の方法があります。
- DXの社内コミュニティ発足
- 社内ポータルでデジタル情報発信
- 外部のDXイベント・コミュニティに参加
デジタル情報をキャッチアップできるコミュニティがあれば、社員のデジタルトランスフォーメーション(DX)学習のモチベーションも向上するでしょう。
スキルマップの正当な評価
最後は、DXスキルマップの正当な評価です。スキルマップとは、社員が業務を行うために必要なスキルを見える化したもの。
スキルマップには、二つのメリットがあります。
一つ目は、自己スキルの社内での位置付けと、キャリアアップの過程を社員自身で把握できることです。
二つ目は、DX研修の受講履歴やデジタル技術をどこまで取得したかを示すことで、社員のDX能力が客観的に分かることです。社員の「やらされている」という思いを薄められ、モチベーションアップに繋がります。
くわえて単に可視化するだけでなく、デジタル資格取得や認定を目指すのもよい方法です。
NTTのデータによると、育成した転職意向ありのデジタル人材は現在の評価面に不満を抱いている人も多く、「能力の高い社員の昇進」と「頻繁なフィードバック」を求めているというデータがあります。
デジタル人材は、自身を正確に評価する環境を求めて転職を考える傾向があるということです。
このように正当に評価されなければ、DX人材は企業から離れていきます。デジタル技術の評価基準を明確にしたマニュアルを整え、スキルを可視化できる仕組みを作りましょう。
DX人材育成の事例
ここからは デジタルトランスフォーメーション(DX) 人材育成の事例を紹介していきます。
SMBC日興証券
まずはSMBC 日興証券の事例です。SMBC 日興証券は、2022年度までに社員の10%(約900人)をデジタル人材として育成する予定です。DX専門スキルの取得を目指し、プロジェクトマネージメントやデータサイエンティストの研修を設定しています。
同グループは過去にも全従業員5万人を対象に、デジタル技術教育コンテンツの企画と開発を実施。Eラーニングでマインドセット、リテラシー、スキルの三つを学べるようにしています。
参考:日本経済新聞「金融、業務削減4万人分」
参考:株式会社ディジタルグロースアカデミア「グループ全従業員5万人向け、金融デジタルへの挑戦」
良品計画
次は無印良品で有名な、良品計画の事例です。良品計画はデジタルトランスフォーメーション(DX)人材を採用し、EC サービスの内製化を始めています。
2022年8月から2024年8月期の中期経営計画にて、デジタル組織をプロ化することを発表。デジタルシステムのプロ人材を100名規模で登用し、ECを超えたデジタルサービスの開発と運営の変革を行う見通しです。
参考:株式会社良品計画「中期経営計画」
参考:日本経済新聞「システム開発丸投げ脱却 小林製薬や良品計画、DX急ぐ」
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まとめ
DX人材を採用・育成し、デジタルトランスフォーメーション(DX)化を推進することは、業務の効率化だけでなく、新しいビジネス基盤の獲得と拡大が可能となります。その結果、企業の生産性は向上し事業は拡大します。
今後はDX人材の争奪戦が一層激しくなることが予想されています。
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